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空き家問題と終活を放置すると危険?「実家じまい」で損をしないための5つのポイント

終活

公開日:2025/12/19

更新日:2025/12/19

親の家や実家が「空き家」になるかもしれないと分かっていても、終活や実家じまいの話を切り出せずに先送りしている人は少なくありません。しかし、空き家問題と終活を放置すると、固定資産税や維持費の負担が増えるだけでなく、「特定空き家」に指定されて行政から指導を受けたり、倒壊や火災・害獣被害などで近隣住民とのトラブルや損害賠償リスクを抱えるおそれもあります。また、親が亡くなった後に相続や名義変更、遺品整理を一気に背負い込むことで、兄弟間の対立や「誰が管理するのか」「売却か賃貸か解体か」で揉めるケースも少なくありません。

この記事では、「空き家問題 終活」で検索したあなたが知りたいであろう、実家じまいを損せず・揉めずに進めるための具体的なポイントを、終活と生前整理の観点から分かりやすく解説します。まず、日本で深刻化している空き家問題の現状と、終活を後回しにしたときに起こりやすい家族トラブル、実家じまいをしないまま親が亡くなった場合に子ども世代への金銭的・心理的な負担について整理します。そのうえで、親の実家が地方にある場合の管理リスク、固定資産税や都市計画税・光熱費・草刈りなどの維持費が老後資金を圧迫する現実、特定空き家に指定された場合に起こりうる行政指導や行政代執行の流れとリスクを解説します。

さらに、空き家問題と終活を連動させた「実家じまい5つのポイント」として、①親を含めた家族で早めに話し合う方法(親の希望と子どものライフプランのすり合わせ、兄弟姉妹間で相続方針を共有するコツ)、②不動産会社による査定や建物の老朽化・耐震性のチェックを通じて不動産の状態と価値を客観的に把握するポイント、③売却・賃貸・解体といった選択肢のメリット・デメリットと、空き家のまま所有し続ける場合のリスク、④相続登記や名義変更を終活の一環として整理する重要性(2024年の法改正により相続登記が原則義務化された点も含めて)、⑤親が元気なうちからの生前整理と、遺品整理業者を活用する際の注意点や費用相場まで、具体的なステップを紹介します。

あわせて、「親が元気なうち」「介護が必要になってから」「親が亡くなった後」という3つの局面ごとに、実家じまいの進め方とスケジュール、必要な手続きの流れをチェックリスト形式で整理します。固定資産税や都市計画税、売却時の譲渡所得税と控除制度、解体費用・リフォーム費用の目安など、空き家対策にかかるお金と税金の基本も押さえます。また、不動産会社の選び方、司法書士・弁護士・税理士など専門家に相談すべきケースと相談するメリットを解説し、実家を放置して特定空き家になってしまった失敗事例と、早めの実家じまいで兄弟間トラブルを防いだケース、賃貸活用で老後資金を確保できた成功事例も紹介します。

この記事を読み終えるころには、「なぜ実家じまいが必要なのか」「いつ・何から手を付ければよいのか」「売却・賃貸・解体のどれを選ぶべきか」「相続や登記・税金のポイントはどこか」といった疑問が整理され、空き家問題と終活を一体的に進めるための具体的な行動ステップがイメージできるはずです。早めに家族で話し合い、客観的な情報と専門家の力も借りながら実家じまいを計画的に進めることが、将来の金銭的な損失や相続トラブルを防ぎ、親世代・子ども世代の双方が納得できる終活につながります。

1. 空き家問題と終活を放置するリスクとは

親の実家の空き家対策と終活を「そのうち考えよう」と先送りしていると、想像以上に大きな経済的負担や法的リスク、家族関係のトラブルに発展するおそれがあります。高齢化が進む日本では、親が暮らしていた実家が空き家となり、その管理や処分を子ども世代が引き継ぐケースが増えていますが、元気なうちに話し合いや生前整理をしておかないと、いざというときに慌てて対応せざるを得なくなります。

特に、相続登記の義務化や「管理不全な空き家」への行政指導など、法律や制度の動きもあり、空き家を放置することは、単なる「片付けの先送り」では済まない問題になっています。まずは、空き家問題と終活を放置した場合にどのようなリスクが生じるのか、全体像を整理しておきましょう。

リスクの種類

主な内容

経済的リスク

固定資産税や維持費の負担、売却や解体のタイミングを逃すことによる資産価値の目減り

法的・行政上のリスク

相続登記の放置によるトラブル、管理不全な空き家として行政指導を受ける可能性

家族関係のリスク

遺産分割や実家じまいの方針をめぐる兄弟姉妹間の対立や感情的なしこり

近隣・社会的リスク

防犯・防災上の危険、近隣住民とのトラブルや賠償問題に発展するおそれ

心理的リスク

親の死後に大量の遺品整理や手続きが一度に押し寄せ、心身の負担が大きくなる

1.1 日本で深刻化する空き家問題の現状

日本では人口減少や高齢化、都市部への人口集中などの影響で、地方だけでなく都市近郊でも空き家が増え続けています。総務省の住宅・土地統計調査などでも、空き家数の増加や空き家率の上昇が指摘されており、国や自治体は空き家対策のための条例や補助制度を整備するなど、対策を急いでいます。

しかし、現場レベルでは「親が暮らしていた家をどうするか」という個々の家庭の問題が十分に話し合われないまま、住む人がいなくなり、結果として空き家となってしまうケースが少なくありません。特に、親の家が地方にあり、子ども世代が都市部で生活している場合、管理の手間やコストを理由に、実家をそのまま放置してしまう傾向があります。

空き家をそのまま放置すると、老朽化が進み、雨漏りやシロアリ被害、外壁や屋根材の落下など、周囲にも危険を及ぼす状態になりかねません。雑草が伸び放題になったり、郵便物が溜まったりすると、不法侵入や不法投棄、放火などの犯罪リスクも高まります。こうした管理不全な空き家は、地域の景観を損ねるだけでなく、防犯・防災の観点からも大きな問題です。

また、自治体によっては、危険な状態にある空き家を「管理不全な状態にある空き家」や、特に深刻なものを「特定空き家」に位置付け、指導や勧告、場合によっては行政代執行による解体などの措置を取ることもあります。このような行政対応まで発展してしまうと、所有者には解体費用などの負担が生じ、結果的に「価値のある実家」を引き継ぐどころか、「負担の大きい負動産」となってしまうリスクがあります。

本来であれば、親が元気なうちに「この家をどうしたいか」「相続後に誰が管理するのか」といった終活の一環として方針を決めておけば、ここまで事態が悪化する前に対策を講じることができます。空き家問題は、単なる住宅・不動産の問題にとどまらず、家族のライフプランや老後資金計画、地域コミュニティの安全とも密接に関わっているのです。

1.2 終活を後回しにしたときに起こる家族トラブル

終活の中心となるのは、資産や相続の整理、医療・介護の希望、葬儀やお墓のことなど、「自分の人生のしまい方」を家族と共有しておくことです。ところが、親世代が「縁起が悪い」として終活の話題を避けたり、子ども世代が「忙しいから」と具体的な話し合いを先延ばしにしていると、いざ相続が発生したときに家族トラブルが一気に表面化します。

特に、実家をめぐるトラブルは、金額的な問題だけでなく、「誰が親の面倒を見てきたのか」「誰がどれだけ負担してきたのか」といった感情面の不満も絡むため、兄弟姉妹の関係が決定的に悪化する原因になりがちです。「長男だから実家を継ぐべき」「遠方に住んでいるから管理できない」など、立場によって主張が食い違い、結論が出ないまま年単位で揉めてしまうケースもあります。

終活を後回しにすると、次のようなトラブルが起こりやすくなります。

終活を放置した場合に起こりやすいトラブル

具体的な状況

遺産分割協議がまとまらない

遺言書や生前の意向がわからず、「実家を売るか・残すか」「誰が住むか」で意見が対立する

介護や医療の負担をめぐる不満

生前に介護を担ってきた子どもが「自分ばかり負担してきた」と感じ、遺産分割で揉める

連絡が取りづらい親族の存在

疎遠になっていた兄弟や相続人が相続開始後に現れ、話し合いがスムーズに進まない

管理責任の所在があいまい

名義人と実際に管理している人が異なり、修繕や固定資産税の負担を誰が負うかで対立する

感情的なしこりの長期化

「もっと早く話し合っておけばよかった」と後悔しながらも、関係修復が難しくなる

また、親が認知症を発症して判断能力が低下すると、実家を売却したり、名義変更をしたりといった重要な手続きを、本人の意思に基づいて進めることが難しくなります。その場合、成年後見制度などを利用しなければならず、手続きが複雑になったり、家族が思い描いていた形で実家じまいができなくなることもあります。

本来であれば、親がしっかりと判断できるうちに「実家をどうするか」「財産をどのように分けるか」という方針を話し合い、必要に応じて遺言書を作成したり、生前贈与や生命保険の活用を検討しておくことで、後々のトラブルを大幅に減らすことができます。終活を後回しにすることは、「今は平穏に見える家族関係に、将来の火種を抱え込んでいる」状態だといえるのです。

1.3 実家じまいをしないまま親が亡くなった場合の負担

実家じまいとは、親が暮らしている、あるいはかつて暮らしていた実家について、親が元気なうちから家族で話し合い、生前整理や相続対策を進めておくことを指します。これをしないまま親が亡くなってしまうと、子ども世代には短期間に多くの負担がのしかかります。

まず、相続が発生すると、相続人は限られた期間の中で、葬儀の準備や各種手続き、金融機関の対応など、やるべきことが一気に増えます。そのうえで、実家の相続や名義変更、固定資産税の納付、電気・ガス・水道などの契約の整理、膨大な遺品整理などを進めなければなりません。

実家じまいをしていない場合、「どこから手を付けてよいかわからない」状態になり、結果として空き家のまま放置される期間が長引きやすくなります。その間も、固定資産税や火災保険料、庭木の剪定や清掃などの管理費用は発生し続けます。遠方に住んでいる場合は、現地に通うための交通費や時間的コストも無視できません。

さらに、実家を共有名義で相続した場合、将来的に売却や賃貸、解体などをしようとしても、相続人全員の合意がなければ進めることができません。「売りたい人」と「残しておきたい人」が対立すると、話し合いが何年も進まないこともあります。その間にも家屋の老朽化は進み、資産価値は下がり続けます。

親が亡くなった後の負担は、金銭面だけではありません。大量の荷物や思い出の品に向き合う遺品整理は、精神的にも大きなエネルギーを必要とします。仕事や子育てで忙しい時期に、突然「実家の片付け」と「空き家の管理」を背負うことになれば、心身ともに疲弊してしまう人も少なくありません。

こうした事態を避けるためには、親が健在なうちから少しずつ生前整理を進め、「残したいもの」と「手放してよいもの」を一緒に確認しておくことが重要です。また、「誰が実家を相続し、どのように管理するのか」「売却や解体も視野に入れるのか」といった方針を共有しておくことで、相続開始後の手続きをスムーズに進めやすくなります。

実家じまいをしないまま親が亡くなると、子ども世代は「もっと早く話し合っておけばよかった」「生前整理をしておけば、こんなに苦労しなかったのに」と後悔することが少なくありません。逆に言えば、空き家問題と終活をリンクさせて早めに実家じまいに取り組むことは、親のためだけでなく、将来の自分たち家族を守ることにもつながるのです。

2. なぜ実家じまいが必要なのか生前整理の重要性

親の高齢化や少子化によって、誰も住まなくなった「空き家」が増え続けています。とくに地方にある実家は、子ども世代が都市部で生活しているケースが多く、管理の手が行き届かないまま放置されやすい不動産です。こうした中で、親が元気なうちから「実家をどうするのか」を家族で話し合い、生前整理として実家じまいを進めておくことは、空き家問題を防ぎ、老後の安心や相続トラブルの回避につながる重要な終活の一部といえます。

実家じまいを先送りしたまま親が介護状態になったり、突然亡くなってしまったりすると、相続人である子ども世代が、時間もお金も気力も必要な「空き家の後片付け」を一気に背負うことになります。反対に、親子で早い段階から生前整理に取り組めば、親の意思を尊重しながら売却・賃貸・解体といった選択肢を冷静に検討でき、結果的に家族全員の負担を減らし、資産を守ることにつながります。

2.1 親の実家が地方にある場合の管理リスク

親の生まれ育った実家が地方にあり、子どもが都市部で生活している場合、「距離のハードル」が管理リスクを一気に高めます。数時間かけて帰省しなければならないため、月に何度も様子を見に行くことは現実的ではなく、年に数回の一時的な掃除や草刈りにとどまりがちです。その結果、気づかないうちに建物の老朽化が進んだり、近隣住民から苦情が寄せられたりするケースも少なくありません。

地方の空き家は、都市部よりも土地価格が低いことが多く、「売っても大した金額にならないから」と放置されやすい一方で、雪害・台風・獣害など自然環境の影響を強く受けやすい地域も多く存在します。さらに、地域によっては高齢化が進み、近隣住民も高齢者ばかりであるため、空き家の異変に気づいてもすぐに対応できず、問題が長期化するおそれもあります。

地方の実家を放置した場合に想定される主な管理リスクを整理すると、次のようになります。

管理リスクの種類

具体的な内容・起こりうる問題

建物の老朽化・倒壊リスク

屋根や外壁の破損、雨漏り、シロアリ被害などが進行し、地震や台風時に倒壊の危険が高まる。補修費用が膨らみ、最終的に解体が必要となる場合もある。

庭木・雑草の放置

庭木が越境して隣地の敷地や電線にかかる、雑草や落ち葉が道路をふさぐなど、近隣からの苦情や行政からの指導につながるおそれがある。

防犯・防災上の問題

人の出入りがない家は空き巣や不法侵入の標的になりやすく、不審火やたまり場化など治安悪化の原因となる可能性がある。

衛生面の悪化

ゴミの放置や動物の侵入、害虫の繁殖などにより悪臭や害虫被害が発生し、周辺環境に悪影響を及ぼす。

管理コストと時間的負担

定期的な見回りや清掃、修繕のための移動時間・交通費・宿泊費がかさみ、仕事や自分の家庭生活にも影響が出る。

こうしたリスクは、所有者や相続人が意図せず「結果的に放置してしまう」ことで生じるものです。だからこそ、親が元気なうちに「将来、誰がどのように実家を管理するのか」「そもそも持ち続けるべきか」まで含めて話し合い、生前整理として方針を決めておくことが、空き家問題を未然に防ぐうえで重要になります。

2.2 固定資産税や維持費が家計と老後資金を圧迫する現実

実家が空き家になっても、所有している限り固定資産税や都市計画税は毎年かかり続けます。誰も住んでいないのに税金だけを払い続ける状態は、心理的なストレスになるだけでなく、長期的には老後資金をじわじわと削る要因にもなります。さらに、建物を維持するためには、火災保険料や最低限の修繕費、管理を委託する場合の費用なども必要になります。

とくに、親とは別に自宅を所有している子ども世代にとっては、「自分たちの住宅ローンや教育費+親の空き家の維持費」という二重負担になりがちです。この負担は短期的には目立たなくても、10年、20年と積み重なることで大きな差になります。つまり、実家じまいを先送りすることは、気づかないうちに家計と老後資金を圧迫し続ける選択になりかねません。

空き家を持ち続けた場合に想定される主な費用項目を整理すると、次のようなイメージになります。

費用の種類

具体的な内容

空き家状態で想定される負担

固定資産税・都市計画税

土地・建物の評価額に応じて毎年課税される税金。

居住していなくても所有している限り継続して発生し、長期的に見ると大きな金額になる。

火災保険料

火災や自然災害に備えるための保険料。

無保険のまま放置すると、万一の火災・台風被害時に自己負担が大きくなるため、ある程度の保険加入が望ましい。

修繕・メンテナンス費用

屋根・外壁・雨どいなどの補修、シロアリ対策、設備の点検など。

定期的な補修を怠ると老朽化が進み、将来の大規模修繕や解体費用が高額になるリスクがある。

管理委託・清掃費用

草刈り、庭木の剪定、家屋内外の清掃を業者に依頼する費用。

遠方に住んでいる場合は、年数回の作業でも毎年コンスタントに支出が発生する。

交通費・宿泊費

所有者や家族が現地に赴くための移動費・宿泊費。

お盆や年末年始の帰省とは別に「管理のための帰省」が必要となり、まとまった出費になりやすい。

これらの費用を「何となく払っている」状態が続くと、自分たちの老後資金づくりや、親の介護費用の準備が十分にできなくなるおそれがあります。そのため、生前整理として実家じまいを検討する際には、空き家を持ち続けた場合の総額コストと、売却や賃貸・解体など他の選択肢を取った場合のメリット・デメリットを比較する視点が欠かせません。

親が元気なうちであれば、親の年金収入や生活費、今後の介護費用の見込みなども一緒に確認しながら、「この先何年分の維持費を払うつもりなのか」「そのお金を他の目的に回したほうがよいのではないか」といった、より具体的なライフプランの話し合いが可能になります。こうした対話こそが、終活としての生前整理の核心部分だといえるでしょう。

2.3 特定空き家に指定されるとどうなるか

老朽化が進んだ空き家や、適切な管理が行われていない空き家は、自治体によって「特定空家等(特定空き家)」に該当すると判断される場合があります。具体的には、倒壊のおそれがある、衛生上有害な状態である、治安や景観を著しく損なっているなど、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしているとみなされるケースです。一度「特定空き家」として扱われると、所有者や相続人にとっての負担とリスクは一気に高まります。

まず、自治体から現地調査や指導が入り、必要に応じて修繕や除却(解体)などを求められることがあります。所有者がこれに対応しないまま放置すると、行政代執行によって自治体が強制的に解体を行い、その費用が後から請求される可能性もあります。また、特定空き家と判断された場合、固定資産税の軽減措置が適用されなくなり、「危険な空き家なのに税負担が増える」という二重のデメリットを抱えることになりかねません。

こうした事態を避けるためにも、親が元気なうちに建物の状態を確認し、修繕・売却・解体などの方針を検討しておくことが重要です。つまり、特定空き家に指定される前の段階で、終活の一環として実家じまいと生前整理を進めておくことが、将来の行政手続きや金銭的な負担を大きく減らす空き家対策になるのです。

2.3.1 行政指導や行政代執行の可能性

空き家が危険な状態にある、あるいは周辺の生活環境に悪影響を及ぼしていると判断された場合、自治体は所有者に対して指導や助言、勧告、命令などの行政指導を行うことがあります。最初は「改善を求める通知」や「現況の確認」といったソフトなアプローチであっても、それを無視し続ければ、より強い措置へと進んでいく可能性があります。

所有者が必要な修繕や解体に応じないまま危険な状態を放置した場合、最終的な手段として行政代執行が行われることがあります。これは、自治体が代わりに解体工事などを行い、その費用を所有者に請求する仕組みです。解体工事は規模によって高額になることも多く、その費用を一度に支払うことが難しいケースも想定されます。

親が急に亡くなり、相続人が空き家の存在や状態を十分に把握しないまま年月が経つと、「気づいたときには行政指導が来ていた」「解体費用の請求書が届いた」という状況にもなりかねません。こうしたリスクを避けるためにも、親が判断力のあるうちに、建物の状態や自治体からの通知の有無を一緒に確認し、どのタイミングで実家じまいを進めるのかを話し合っておくことが大切です。

2.3.2 近隣住民とのトラブルや損害賠償リスク

特定空き家に限らず、管理不全の空き家は近隣住民とのトラブルの火種になりやすい存在です。たとえば、倒れかけた塀や屋根瓦が落下して隣家の車や建物を傷つけたり、通行人がけがをしたりすれば、所有者が損害賠償を求められる可能性があります。また、庭木や雑草が越境して日照や通行の妨げになったり、害虫や小動物が発生して生活環境に悪影響を及ぼしたりすると、苦情や相談が自治体に寄せられ、問題が表面化しやすくなります。

さらに、空き家が放火や不審者のたまり場など治安上の問題を引き起こした場合、「危ない家を何年も放置している」として、地域コミュニティからの信頼を失うおそれもあります。所有者や相続人が遠方に住んでいると、近隣住民は直接連絡を取りづらく、結果として不満や不安が自治体への相談や法的手続きへと発展してしまうこともあります。

民法上、所有者には自己の不動産を適切に管理する責任があり、管理を怠った結果として他人に損害を与えた場合には、損害賠償責任を問われることがあります。たとえ「忙しくてなかなか帰省できなかった」「相続人同士で話し合いがまとまらなかった」といった事情があっても、法的責任が免れるとは限りません。その意味でも、親の生前から実家の将来について話し合い、トラブルの芽を早いうちに摘んでおくことこそが、家族と地域の双方を守る終活だといえます。

近隣住民との良好な関係は、将来その地域に戻る可能性がある子ども世代にとっても重要な資産です。実家じまいと生前整理を通じて早めに空き家問題に向き合うことで、「迷惑な空き家の所有者」になってしまうことを防ぎ、親が長年お世話になった地域との関係を穏やかに締めくくることにもつながります。

3. 空き家問題と終活を連動させる実家じまい5つのポイント

空き家問題を家庭内だけで抱え込んだまま時間が過ぎてしまうと、相続が発生したときに一気に手続きや費用の負担がのしかかります。その負担を減らし、親世代・子世代の双方が安心して老後と将来の生活設計を立てるためには、終活と実家じまいを切り離さず、計画的に進めることが重要です。

ここでは「家族での話し合い」「不動産の客観的な把握」「活用方法の比較検討」「相続・名義変更の整理」「遺品整理と生前整理」の5つのポイントから、空き家問題と終活を連動させる具体的な考え方と進め方を解説します。

3.1 ポイント1 家族で早めに話し合う場を持つ

空き家問題と終活を両立させるうえで、最初の一歩となるのが家族会議です。親の健康状態が良いうちに「実家をどうするか」「介護が必要になったらどうするか」「相続はどのように分けるか」といったテーマを、家族全員で話し合う場を設けることが重要です。

特に実家が遠方にある場合や、兄弟姉妹が別々の地域に住んでいる場合は、早めにオンライン会議や帰省のタイミングを活用して、定期的に情報を共有する仕組みを作っておくことが、後々のトラブル回避につながります。

3.1.1 親の希望と子どもの現実的なライフプランのすり合わせ

親世代は「できるだけ長く住み慣れた家で暮らしたい」「思い出のつまった実家を残したい」と考える一方で、子世代には「仕事の都合で地元に戻れない」「自分たちの住宅ローンも抱えている」といった現実的な制約があります。どちらか一方の意見だけで決めてしまうと、不満や後悔が残りがちです。

親の気持ちを尊重しながらも、子どもの仕事や居住地、子どもの教育費や老後資金といったライフプランを共有し、感情論ではなく事実ベースで選択肢を整理することが大切です。

親の希望の例

子どもの事情の例

折衷案の例

できるだけ長く実家に住み続けたい

首都圏で勤務しており、地元に戻る予定がない

一定の時期までは親が住み続け、その後は売却・賃貸・施設入居とあわせて見直す前提で話し合う

実家を「子や孫の帰省先」として残したい

固定資産税や維持費の負担が重く、二重生活は難しい

数年おきに利用状況と費用負担を見直すことを前提に所有を続けるか、将来的な売却時期をあらかじめ決めておく

仏壇やお墓との関係で家を残したい

実家とは別の地域に永住予定で、管理が困難

仏壇や位牌は引き取り・移動し、お墓は墓じまい・改葬を検討しながら不動産自体は売却や賃貸を候補にする

このように、親の希望と子どもの事情を書き出して整理すると、双方が納得しやすい「落としどころ」が見えやすくなります。

3.1.2 兄弟姉妹で相続方針を共有する方法

実家じまいで最もトラブルになりやすいのが、兄弟姉妹間の認識のズレです。相続の段階になって初めて「売りたい」「残したい」「誰が住むのか」といった意見の違いが表面化すると、感情的な対立になってしまいます。

兄弟姉妹がそろっている場で「実家の将来」について一度話し合い、方針のたたき台を共有しておくことが、空き家問題の長期化を防ぐうえで重要です。その際には、誰がどの作業を担当するか、費用はどう分担するかといった役割分担もあわせて整理しておくとスムーズです。

話し合いで決めておきたい項目

具体的な内容

基本方針

売却・賃貸・解体・一部を親が利用し続けるなど、方向性の候補を出し合う

費用負担

固定資産税、修繕費、草刈り・清掃費などを誰がどの割合で負担するかを明確にする

連絡方法

家族LINEグループやメールなど、情報共有の手段と頻度(例:年に1回は現状確認のミーティング)を事前に決めておく

記録の保管

話し合いの内容を簡単なメモとして残し、全員で共有することで「言った・言わない」のトラブルを防ぐ

可能であれば、親にも参加してもらい、「親の意向」と「子ども世代の現実」を同じテーブルで確認し合うと、後の相続手続きや名義変更もスムーズに進みやすくなります。

3.2 ポイント2 不動産の状態と価値を客観的に把握する

実家じまいの方針を決めるには、「この家がどれくらいの価値を持ち、どの程度の維持・修繕が必要なのか」を冷静に把握する必要があります。築年数や立地、構造、周辺の取引価格など、感覚ではなくデータにもとづいた判断材料をそろえることが大切です。

「とりあえず残しておこう」「いつか使うかもしれない」と曖昧なままにせず、早い段階で不動産会社や専門家に相談して現状を見える化しておくことが、空き家問題を長期化させないポイントです。

3.2.1 地元の不動産会社に査定を依頼するタイミング

査定のベストタイミングは、「親の健康状態に余裕があり、家族で将来の話ができる段階」です。親が施設に入る直前や、すでに相続が発生してから慌てて査定をとると、感情面・時間面の余裕がなく、十分な比較検討ができなくなることがあります。

査定には、大きく分けて机上査定(簡易査定)と訪問査定があります。それぞれの違いを理解して、目的に応じて使い分けると良いでしょう。

査定の種類

特徴

メリット

注意点

机上査定(簡易査定)

所在地・面積・築年数・間取りなどのデータから概算価格を算出

短時間で複数社からおおよその相場観を把握できる

建物の傷み具合や細かな条件が反映されないため、実際の販売価格と差が出ることがある

訪問査定

担当者が現地を確認し、室内外の状況や日当たり、周辺環境なども踏まえて査定

売却や賃貸を具体的に検討する段階で、より現実的な価格の目安がわかる

親の立ち会いが必要な場合もあるため、日程調整とプライバシーの配慮が必要

最初は机上査定でおおよその相場をつかみ、方向性が見えてきたら訪問査定で詳細を確認するという二段階の進め方も、家族の負担を抑えつつ情報を集める方法として有効です。

3.2.2 老朽化や耐震性など修繕コストの見積もり

実家を賃貸や売却で活用するにしても、老朽化や耐震性に問題があると、大きな修繕費用が必要になることがあります。特に旧耐震基準の時期に建てられた木造住宅などは、地震に対する安全性の点で注意が必要です。

「どの程度修繕すれば安全に住めるのか」「その修繕に見合う賃料や売却価格が期待できるのか」を、早めに建築士や工務店、不動産会社に相談してシミュレーションしておくことが、無理のない実家じまいの計画につながります。

チェック項目

確認のポイント

主な相談先

外壁・屋根

ヒビ割れ、塗装のはがれ、雨漏りの有無などを確認

工務店、リフォーム会社

室内の傷み

床のきしみ、カビ、シロアリ被害、水回りの劣化状況

工務店、シロアリ防除業者

耐震性

建築年や図面、耐震診断の有無を確認し、必要に応じて耐震診断を依頼

建築士、自治体の耐震相談窓口

インフラ

給排水管や電気設備、ガス設備が安全に使える状態かどうか

設備業者、リフォーム会社

修繕を前提に賃貸や売却を検討するのか、あえて大規模な修繕は行わずに現状渡しとするのかなど、複数パターンの概算見積もりを取っておくと、家族で判断しやすくなります。

3.3 ポイント3 売却か賃貸か解体か活用方法を比較検討する

実家をどう扱うかは、大きく分けて「売却する」「賃貸に出す」「解体して更地にする」という3つの方向性があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、家族構成や資金計画、地域の不動産市況によって最適解は異なります。

感覚だけで判断せず、各選択肢の特徴やリスクを並べて比較することで、家族全員が納得しやすい実家じまいの形を見つけやすくなります。

項目

売却

賃貸

解体・更地

収支のイメージ

売却代金を一度に受け取れるが、その後の家賃収入は発生しない

継続的な家賃収入が見込めるが、空室リスクや修繕費も発生する

収入はないが、建物の維持・修繕費は不要になる

初期費用

仲介手数料や不要品処分費などが中心

リフォーム費用や管理会社への手数料などが必要になることが多い

解体費用や整地費用が発生する

向いているケース

実家に戻る予定がなく、老後資金や介護費用の確保を優先したい場合

将来的に子ども世代が戻る可能性があり、それまでの期間に賃貸活用したい場合

建物の老朽化が激しく、活用よりもリスク低減を重視したい場合

主なリスク

売却時期や価格によっては想定より少ない金額になる可能性

空室期間の固定資産税負担や、入居者トラブルへの対応が必要

更地の固定資産税負担が増える場合があり、活用計画がないまま更地にすると負担だけが残ることもある

3.3.1 空き家のまま所有し続ける場合のデメリット

売却・賃貸・解体のいずれも選ばず、「とりあえず空き家のまま残しておく」という選択は、一見すると先送りできて楽なように見えます。しかし、実は長期的に見るとデメリットが多く、空き家問題を深刻化させる原因にもなります。

誰も住んでいない実家でも固定資産税や都市計画税はかかり続け、草木の管理や通水・換気など最低限の維持管理もしなければならないため、時間とお金の両方の負担が積み重なっていきます。また、老朽化が進むと近隣への落雪や瓦の落下、倒壊、害虫・小動物の発生といったリスクも高まります。

管理が不十分な状態が続くと、自治体から指導を受けたり、「特定空き家」に指定される可能性もあります。その場合、固定資産税の優遇措置が受けられなくなるなど、経済的な負担が一気に増えるリスクも考えられます。

3.3.2 賃貸活用や民泊活用を選ぶ際の注意点

空き家を賃貸住宅や民泊として活用すれば、家賃や宿泊料という収入を得られる可能性があります。一方で、「空室期間が続いて収入が安定しない」「設備トラブルや近隣トラブルへの対応が必要になる」といった点には注意が必要です。

賃貸活用を検討する場合は、周辺の賃貸需要や家賃相場、必要なリフォームの内容と費用、管理会社への委託料などを総合的に試算し、本当にプラスになるのかを冷静に見極めることが欠かせません。

民泊活用についても、各種法令・条例に基づく届出やルールがあり、清掃や鍵の受け渡し、騒音対策など、一般的な賃貸以上に手間と管理体制が求められます。遠方に住んでいる家族だけで運営するのは負担が大きくなるため、専門の管理会社に委託するかどうかも含めて慎重に検討しましょう。

3.4 ポイント4 相続や名義変更を終活の一環として整理する

実家じまいを空き家問題の解決だけで終わらせず、終活の一部として位置づけるには、「相続」と「名義変更」を早めに整理しておくことが重要です。名義が亡くなった親のまま長期間放置されると、売却や賃貸、建て替えといった活用がスムーズにできなくなり、結果として空き家問題が固定化してしまいます。

親が元気なうちから、誰が不動産を引き継ぐのか、相続が発生したらどのような手順で名義変更を行うのかを具体的にイメージし、必要であれば遺言書の作成や専門家への相談を進めておくことが大切です。

3.4.1 相続登記を放置するリスクと2024年の法改正

これまで相続登記は任意とされてきましたが、2024年4月1日からは原則として義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から一定期間内に登記をしなければならず、正当な理由なく相続登記を行わない場合には、過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。

相続登記を長期間放置すると、相続人の世代交代や人数の増加によって権利関係が複雑になり、誰の同意が必要なのか分からなくなるため、売却や活用が極めて難しくなるという大きなリスクがあります。また、登記簿上の名義と実際の所有者が一致しない状態が続くことで、銀行からの融資を受けられない、建て替えができない、といった実務上の支障も生じます。

さらに、法改正により、2024年4月1日より前に発生した相続であっても、まだ相続登記が行われていない不動産は一定の期限内に登記を行う必要が出てきました。過去の相続分も含めて、実家や祖父母名義の不動産がそのままになっていないか、一度洗い出して確認しておくことが重要です。

3.4.2 司法書士や税理士に相談するメリット

相続登記や名義変更は、自分たちだけで手続きすることも不可能ではありませんが、書類の準備や法的な要件の確認など、慣れていないと時間と労力がかかります。特に、相続人が多い場合や、過去の相続分が整理されていない場合は、専門家のサポートを受けた方がスムーズです。

司法書士は、不動産の相続登記・名義変更の専門家として、必要書類の案内や登記申請の代理を行ってくれるため、手続きの漏れや記載ミスを防げるという大きなメリットがあります。また、戸籍の収集や相続関係説明図の作成など、時間のかかる作業も代行してもらえることがあります。

一方で税理士は、相続税や贈与税のシミュレーション、二次相続まで見据えた節税対策の検討など、税金面からのアドバイスをしてくれます。「親の生前に贈与をした方がよいか」「売却代金をどのように分けると公平か」といった相談も含めて、トータルに老後や相続の資金計画を立てるうえで心強いパートナーになります。

必要に応じて、弁護士やファイナンシャルプランナーと連携してもらうことで、遺言書の作成や遺産分割協議の進め方など、法律・お金の両面から実家じまいと終活をサポートしてもらうことも可能です。

3.5 ポイント5 遺品整理と生前整理を段階的に進める

実家じまいというと、親が亡くなった後に大量の荷物を一気に片づけるイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、心身の負担を軽くし、トラブルを防ぐには、親が元気なうちから少しずつ生前整理を進めておき、相続発生後に行う遺品整理の負担を減らしておくことが重要です。

「生前整理で持ち物と情報を整理し、遺品整理はその仕上げ」という二段階で考えることで、親にとっても子にとっても納得度の高い実家じまいが実現しやすくなります。

3.5.1 親が元気なうちに処分してよい物を決めておく

生前整理の第一歩は、「何を残し、何を手放すのか」を親自身の意思で決めてもらうことです。アルバムや写真、手紙、趣味のコレクションなど、子世代には価値が分かりにくい物でも、親にとっては大切な思い出であるケースが少なくありません。

親と一緒に家の中を一部屋ずつ見て回り、「残す物」「子どもに譲る物」「売却・寄付・処分する物」にざっくりと分類していく作業を、時間をかけて進めていくと良いでしょう。エンディングノートやノートパソコン、スマートフォンのメモ機能などを使って、「この品物は誰に譲る」「これは処分してよい」とメモを残しておくと、相続発生後の迷いや家族間の認識のズレを減らせます。

分類

具体例

判断のポイント

残す物

アルバム、家族写真、記念品、重要書類など

親が「どうしても残したい」と感じるものかどうか、保管スペースや管理のしやすさも含めて検討する

譲る物

婚礼家具、着物、宝飾品、コレクション品など

誰が受け取るのかをあらかじめ話し合い、できれば本人同士で確認しておく

売却・寄付・処分する物

使われていない家具・家電、衣類、書籍など

リサイクルショップやフリマアプリ、寄付先の活用も含めて、無理なく手放せる方法を選ぶ

こうした生前整理のプロセスは、単なる片づけにとどまらず、親子のコミュニケーションを深める機会にもなります。「どの物に、どんな思い出があるのか」を共有しておくことで、遺品整理のときの心理的な負担も軽くなります。

3.5.2 遺品整理業者に依頼する際の注意点と費用相場

相続発生後の遺品整理は、親の他界という精神的なショックが残るなかで進めなければならず、仕事や家庭との両立も含めて大きな負担になることがあります。荷物量が多い場合や、遠方から何度も通うのが難しい場合には、遺品整理業者への依頼も選択肢になります。

遺品整理業者を選ぶ際は、料金だけで決めるのではなく、見積もりの内容が明確かどうか、作業内容やオプションサービスの範囲、追加料金の条件、口コミや資格の有無などを総合的に確認することが大切です。

ポイント

確認したい内容

見積もり方法

現地での下見にもとづく見積もりか、写真のみの概算か、作業後の追加料金が発生しないか

料金の目安

部屋の広さや荷物量によって費用が大きく変わるため、ワンルームと一戸建てなど複数パターンでおおよその金額帯を確認する

作業範囲

仕分け・梱包・運び出しに加え、清掃や不用品の買取、仏壇や人形の供養など、どこまで対応してもらえるか

信頼性

資格や加盟団体の有無、損害保険への加入状況、見積もり時の説明の丁寧さなど

費用相場は、部屋の広さや荷物の量、立地条件、オプションサービスの有無によって大きく変わりますが、「自分たちだけで行う場合にかかる時間や交通費・処分費」と「業者に依頼した場合の費用」を比較し、心身の負担も含めてトータルで判断することが重要です。

生前整理であらかじめ物を減らしておけば、遺品整理の規模と費用も抑えやすくなり、結果として実家じまい全体の負担軽減につながります。

4. 実家じまいの具体的な進め方とスケジュール

実家じまいは、一度にすべてを終わらせようとすると心身の負担が大きくなりがちですが、段階ごとに進めれば現実的に対応できます。特に、空き家問題と終活は時間との勝負になる側面があり、「親が元気なうち」「介護が必要になったとき」「親が亡くなった後」それぞれの段階で、優先すべき実家じまいのタスクを整理しておくことが重要です。

ここでは、状況別にやるべきこととスケジュールの目安を示しながら、家族がスムーズに実家じまいを進め、将来の空き家リスクを抑えるための流れを解説します。

4.1 親が元気なうちにやっておきたいチェックリスト

親が自分の意思で話し合いに参加できるうちに準備を進めることで、終活としての実家じまいがぐっと円滑になります。親の希望を尊重しながら、相続や名義、住まいの活用方法などの「今は話しにくいこと」に、あえて向き合っておくことが、将来の兄弟間トラブルや特定空き家化の防止につながります。

以下のチェックリストを参考に、家族会議や生前整理の際に一つずつ確認していきましょう。

親が元気なうちに確認したい実家じまいチェックリスト

項目

内容・ポイント

関係する専門家・窓口

家族全員での話し合い

親の老後の暮らし方(自宅か施設か)、実家を将来どうするか(売却・賃貸・解体・空き家管理など)を家族全員で共有します。感情的な対立を避けるため、時間を区切って複数回に分けて話すとスムーズです。

家族、必要に応じてファイナンシャルプランナー

不動産の権利関係の確認

登記簿謄本、固定資産税の納税通知書などから、所有者名義・持分・抵当権の有無を確認します。登記名義と実際の所有者が違う場合や、祖父母名義のままのケースは早めに整理が必要です。

司法書士、市区町村の固定資産税担当窓口

実家の現況チェック

老朽化の程度、雨漏りやシロアリ被害、耐震性、バリアフリーの状況などを確認します。将来売却・賃貸する際のリフォーム費用の目安をつけるため、簡易的な点検だけでも行っておくと判断材料になります。

地元の工務店、ホームインスペクター、不動産会社

将来の活用方針の叩き台作成

「子ども世帯の誰かが住む可能性があるか」「誰も住まない可能性が高いか」を整理し、売却・賃貸・二拠点居住・空き家バンク登録など、現実的な選択肢を洗い出します。

不動産会社、自治体の空き家相談窓口

重要書類の所在把握

権利証(登記識別情報)、実印と印鑑証明書、預貯金通帳、保険証券、年金関係書類、火災保険証券などの場所を一覧化し、家族で共有しておきます。写真を撮っておくと後の相続手続きがスムーズです。

金融機関、保険会社、日本年金機構など

財産目録と負債の整理

自宅不動産のほか、預貯金・有価証券・生命保険・借入金などを簡単なリストにまとめておきます。不動産ローンやカードローンがある場合は、残高と返済条件も記録しておきます。

税理士、ファイナンシャルプランナー

遺言書・エンディングノートの検討

自宅不動産の承継先を明確にしたい場合は、遺言書(できれば公正証書遺言)の作成を検討します。あわせて、医療や介護に関する希望、葬儀・お墓についての考えをエンディングノートにまとめておくと家族の負担が軽くなります。

公証役場、弁護士、司法書士

近隣との関係・連絡先の共有

万一、実家が空き家になった際に連絡をもらえるよう、近隣住民や自治会と日頃から良好な関係を築いておくと安心です。子ども世帯の連絡先を伝えておくと、緊急時の対応がしやすくなります。

自治会、町内会

空き家管理サービス情報の収集

将来、遠方から実家を管理する可能性がある場合、見回り・通風・草刈りなどを代行してくれる空き家管理サービスの有無や料金相場を調べておくと、いざというときに慌てずに済みます。

空き家管理会社、地元の不動産会社

これらの項目を一度に完璧にこなす必要はありませんが、「今年は権利関係の確認」「来年は遺言書とエンディングノート」など、数年かけて段階的に実家じまいを進める意識を持っておくと、結果的に家族全体の負担軽減につながります。

4.2 親が介護状態になってからの進め方

親に介護が必要になると、医療費や介護費用が増える一方で、実家の維持管理に手が回らなくなることがあります。特に、親が施設に入所して自宅が空き家に近い状態になると、防犯・防災リスクや近隣トラブル、固定資産税などのコスト負担が一気に表面化します。

介護状態になってからの実家じまいでは、「介護の方針」と「実家の扱い」を並行して検討することがポイントです。

親が介護状態になってからの実家じまいの主なステップ

タイミング

主な検討・実行内容

関係する専門機関・専門家

要介護認定~介護開始

ケアマネジャーと相談しながら、自宅介護を続けるか、将来的に介護施設入所を視野に入れるかを検討します。その際、「親が自宅で暮らせなくなった後の実家をどうするか」も話題に含めておくと、後の判断がしやすくなります。

地域包括支援センター、ケアマネジャー

施設入所が現実味を帯びた段階

施設入所一時金や毎月の利用料の見通しを立て、実家を維持する余裕があるか、売却や賃貸で資金に充てるべきかを検討します。自宅を担保にするリバースモーゲージなどの制度も含め、選択肢を幅広く確認します。

ケアマネジャー、社会福祉協議会、金融機関、ファイナンシャルプランナー

実家が事実上の空き家になった時点

ポストの整理、通水・換気、庭木の剪定、防犯対策など、最低限の管理体制を整えます。遠方で管理が難しい場合は、空き家管理サービスや地元の不動産会社への管理委託を検討します。火災保険の補償内容も、空き家として適切か確認が必要です。

空き家管理会社、不動産会社、保険代理店

売却・賃貸を本格的に検討する段階

親の判断能力が十分にあるうちに、不動産会社に査定を依頼し、売却か賃貸かのシミュレーションを行います。将来の相続人が複数いる場合は、売却代金の分け方や賃料収入の扱いについても話し合っておきます。

不動産会社、税理士、司法書士

判断能力の低下が見られる場合

認知症などで親の判断能力が不十分になってくると、不動産の売却契約や賃貸契約の締結が難しくなります。その前に、任意後見契約や家族信託などの制度を利用するかどうかを検討し、早めに専門家に相談しておくと安心です。

弁護士、司法書士、公証役場

介護と実家じまいを同時に進めるのは負担が大きいものの、「とりあえず空き家のままにしておく」という選択肢は、費用とリスクの両面で長期的に見るとデメリットが大きいケースがほとんどです。介護サービスの利用が落ち着いてきたタイミングで、実家の売却・賃貸・管理委託など、現実的な選択肢を家族で検討していきましょう。

4.3 親が亡くなった後に必要な手続きの流れ

親が亡くなった後は、葬儀や各種手続きに追われる中で、実家をどう扱うかまで手が回らないことが少なくありません。しかし、不動産の相続や名義変更、相続税の申告には期限があり、実家じまいを後回しにすると、空き家問題と相続問題が同時に重くのしかかってくるおそれがあります。

ここでは、親の死後に必要となる実家まわりの主な手続きの流れを、時系列で整理します。

親が亡くなった後の実家じまいに関する主な手続きとスケジュール

時期の目安

主な手続き・実家に関するポイント

関係する専門家・窓口

死亡直後~葬儀前後

死亡診断書をもとに死亡届を提出し、火葬や葬儀の段取りを行います。この時点で実家が空き家になる場合は、施錠やカーテンの閉め方、電気・ガス・水道の停止や契約変更など、最低限の防犯・防災対策を行います。

市区町村役場、葬儀社

1か月以内

戸籍謄本を収集し、法定相続人を確定します。同時に、不動産を含む遺産の洗い出し(財産目録の作成)を進めます。固定資産税の納税通知書や権利証を確認して、実家の評価額や名義の状態を把握しておきます。

市区町村役場、法務局、司法書士、税理士

3か月以内を目安に

遺産を引き継ぐかどうか(相続放棄・限定承認をするか)を判断します。実家の評価額や住宅ローン、借金の有無によっては、相続放棄も選択肢となります。相続人同士で遺産分割協議を行い、実家の取得者や売却方針などを話し合います。

家庭裁判所、弁護士、司法書士、税理士

遺産分割協議成立後できるだけ早く

遺産分割協議書を作成し、不動産の相続登記(名義変更)を行います。相続登記を長期間放置すると、相続人が増えて手続きが複雑になり、将来的な売却や解体が困難になります。

司法書士、法務局

相続税申告期限まで

相続税が発生する可能性がある場合は、税理士と相談しながら不動産の評価額や特例の適用可否(小規模宅地等の特例など)を確認します。実家を売却して納税資金に充てる場合は、売却スケジュールも逆算しておく必要があります。

税理士、国税庁・税務署

名義変更完了後~

実家を売却する場合は、不動産会社に媒介を依頼し、査定・販売活動を進めます。賃貸や空き家管理を選ぶ場合は、管理委託契約の内容(点検頻度・報告方法・費用)を確認し、近隣へのあいさつや連絡体制も整えておきます。

不動産会社、空き家管理会社

並行して随時

遺品整理を行い、生活用品や家財道具を整理します。家族で整理する場合も、時間や距離の制約が大きい場合は遺品整理業者を依頼する選択肢があります。処分費用やリサイクル料金を見積もり、不要な物を減らしてから売却・賃貸・解体の判断をすると効率的です。

遺品整理業者、不用品回収業者、リサイクルショップ

親の死後は、手続きの多さと精神的ショックから、どうしても実家じまいが後回しになりがちです。しかし、「葬儀が落ち着いたら相続人全員で集まり、実家の扱いを含めた今後の流れを確認する場」を早い段階で持つことが、その後の空き家リスクを大きく減らしてくれます。

また、相続登記や相続税申告など、期限や専門知識が必要な手続きについては、司法書士や税理士、不動産会社などの専門家を早めに巻き込み、家族だけで抱え込まないことも、実家じまいをスムーズに進める重要なポイントです。

5. 空き家対策にかかる費用と税金を把握する

空き家や実家をどうするかを決めるうえで、見落としがちなのが「毎年かかり続ける税金」と「解体・リフォームなどの大きな支出」です。これらを把握せずに終活や実家じまいを進めてしまうと、相続後に子ども世代が思わぬ負担を抱えることになりかねません。生前の段階で空き家対策にかかる費用と税金の仕組みを整理しておくことは、老後資金の計画と家族の負担軽減の両方につながる重要なステップです。

5.1 固定資産税や都市計画税の基本を理解する

空き家対策でまず押さえておきたいのが、不動産を所有しているだけで毎年かかる「固定資産税」と、都市計画区域内の土地・建物にかかる「都市計画税」です。いずれも市区町村に納める地方税で、実家を空き家のまま所有し続けるだけでも、継続して税金の負担が発生する点が終活の重要な論点になります。

税額は、自治体が決める「課税標準額(評価額)」に税率を掛けて計算されます。おおまかなイメージをつかむため、代表的な内容を整理すると次のようになります。

項目

内容

標準的な税率の目安

固定資産税

土地・建物などの固定資産に毎年かかる税金です。毎年1月1日時点の所有者に課税され、「課税標準額(評価額)×税率」で計算されます。

標準税率:年1.4%前後(自治体によって多少上下する場合あり)

都市計画税

市街化区域内の土地・建物にかかる税金です。固定資産税と同じ評価額をもとに、別途「課税標準額×税率」で計算されます。

制限税率:年0.3%以下(多くの自治体は0.2〜0.3%)

持ち家や実家の土地は、利用実態によって課税標準が軽減される「住宅用地の特例」などの制度が適用されることがあります。代表的な内容を押さえておきましょう。

区分

対象となる土地

固定資産税の課税標準

都市計画税の課税標準

小規模住宅用地

住宅1戸あたり200㎡以下の部分

評価額の6分の1

評価額の3分の1

一般住宅用地

200㎡を超える住宅用地部分(一定の範囲まで)

評価額の3分の1

評価額の3分の2

このような軽減措置があるため、建物が建っている住宅用地の固定資産税は、更地と比べて税額が大きく抑えられているケースが多くあります。

空き家対策を検討する際に注意したいのは、建物を解体して更地にすると住宅用地の特例が使えなくなり、土地の固定資産税・都市計画税が数倍に増える可能性がある点です。一方で、老朽化が著しく「特定空き家」と判断されるような状態になると、軽減の対象から外される場合もあり、結果的に税負担が増えるリスクがあります。

つまり、「建物を残すか・解体するか」を判断するときは、目先の解体費用だけでなく、その後の固定資産税・都市計画税がどう変わるかも含めてシミュレーションすることが大切です。具体的な税額や特例の適用状況は市区町村ごとに異なるため、納税通知書の明細や自治体の税務担当窓口で確認しながら家族で話し合うとよいでしょう。

5.2 売却時にかかる譲渡所得税と控除制度

空き家や実家を売却して現金化する場合、「売却代金がそのまま手元に残る」と考えてしまいがちですが、実際には譲渡所得税(所得税・復興特別所得税・住民税)がかかる可能性があります。終活の一環として売却を検討するなら、「いくら税金がかかるのか」「どこまで控除で減らせるのか」を早めに把握しておくことが重要です。

基本的な計算式は次のとおりです。

譲渡所得(もうけ) = 譲渡価額(売却価格) −(取得費 + 譲渡費用) − 各種特別控除

ここでいう取得費には、購入代金のほか、購入時の仲介手数料・登記費用・リフォーム費用の一部などが含まれます。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や測量費、解体費用などが入ることが多く、「どこまで経費として認められるか」で税額が大きく変わる点がポイントです。

区分

所有期間の目安

税率のイメージ

特徴

短期譲渡所得

所有期間がおおむね5年以下

合計で約40%前後(所得税・復興特別所得税・住民税)

投機的な売買とみなされ、税率が高く設定されています。

長期譲渡所得

所有期間がおおむね5年超

合計で約20%前後(所得税・復興特別所得税・住民税)

長期保有が前提とされるため、短期よりも税率が低く抑えられています。

実際の税率は、その年の税制や復興特別所得税の扱いによって細かく変わるため、売却前には必ず最新情報を税務署や税理士に確認することが大切です。そのうえで、終活や空き家対策と相性のよい代表的な控除・特例を押さえておきましょう。

  • マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円特別控除
    自宅として住んでいた家や土地を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円まで差し引くことができる制度です。終活の一環として住み替えや実家じまいを行う際に、税負担を大きく減らせる可能性があります。

  • 被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の特別控除
    親が一人暮らしをしていた実家を相続し、その後空き家となった家屋・土地を売却する場合、一定の条件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例(いわゆる「空き家の3,000万円特別控除」)が設けられています。適用要件や期限、耐震基準の充足方法など細かな条件があるため、国税庁の情報や税理士への相談が欠かせません。

  • 所有期間10年以上の居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例
    マイホームとして長く住んでいた家を売却する場合には、所有期間が10年を超えていることなどを条件に、長期譲渡所得よりもさらに低い税率が適用される特例があります。3,000万円特別控除と併用できるケースもあるため、老後の住み替えや実家じまいを検討するときに有力な選択肢になります。

特に相続した空き家を売却するケースでは、「どの名義でいつ売るか」「相続登記や名義変更をいつ済ませるか」によって、利用できる特例や税額が変わることがあります。終活段階で家族と方針を共有し、税理士・司法書士など専門家と連携しながらスケジュールを組むことで、税負担を抑えつつスムーズに実家じまいを進めやすくなります。

5.3 解体費用やリフォーム費用の目安

空き家対策では、「解体して更地にする」「最低限のリフォームをして売却・賃貸に回す」「大規模リノベーションをして自分や子ども世代が住み続ける」といった複数の選択肢があります。それぞれにまとまった費用がかかるため、解体費用やリフォーム費用の相場を知らないまま判断してしまうと、老後資金や相続後の家計を圧迫するリスクが高いと言えます。

まずは、代表的な戸建て住宅の解体費用のイメージをつかみましょう。

建物の構造

坪単価の目安

30〜40坪程度の目安総額

備考

木造住宅

1坪あたり約3〜5万円前後

おおよそ100万〜200万円程度

一般的な一戸建てで最も多い構造。周辺環境や付帯工事の有無で増減します。

鉄骨造

1坪あたり約4〜8万円前後

おおよそ150万〜250万円程度

鉄骨の切断・処分費用がかかる分、木造より割高になる傾向があります。

鉄筋コンクリート造

1坪あたり約6〜10万円前後

おおよそ200万〜400万円程度

コンクリートの破砕・搬出費用が大きく、構造上もっとも解体費が高くなりやすいタイプです。

上記はあくまで目安であり、実際の費用は建物の老朽化具合、敷地への重機搬入のしやすさ、アスベストの有無、ブロック塀や庭木の撤去などの付帯工事によって大きく変わります。見積もりを1社だけで決めず、複数の解体業者・不動産会社から相見積もりを取ることが、コストを抑えつつ安全な解体工事につなげるコツです。

一方、空き家を解体せずに活用する場合には、リフォームやリノベーションの費用が問題になります。全体像をつかみやすいよう、代表的な費用帯を整理すると次のようになります。

リフォームの規模・内容

費用の目安

主な工事例

終活・空き家対策での活用イメージ

部分リフォーム

約50万〜300万円前後

水回り(キッチン・浴室・トイレ・洗面)の交換、内装(壁紙・床)張り替えなど

最低限の修繕を行い、「売れる状態」「貸せる状態」にすることで、解体せずに資産として活用しやすくなります。

大規模リフォーム

約300万〜1,000万円前後

外壁・屋根の塗装や張り替え、間取り変更、断熱・バリアフリー改修、耐震補強など

親世代の終の棲家として暮らしやすくする、もしくは子ども世代が住み継げるレベルまで性能を引き上げて空き家化を防ぐ場合に検討されます。

フルリノベーション

約700万〜2,000万円前後

スケルトンリフォーム(骨組みだけ残して全面改修)、設備一新、間取りの全面変更など

立地が良く、新築購入よりもトータルコストを抑えながら長く住み続けたい場合や、高い家賃での賃貸・売却価値を狙う場合に選択肢となります。

耐震補強や断熱改修、バリアフリー工事などは、工事内容によって100万〜300万円程度かかることもありますが、自治体によっては空き家の解体や耐震改修、省エネリフォームに対して補助金・助成金が用意されている場合があります。終活の一環として実家や自宅のリフォームを検討する際には、工事内容だけでなく、補助制度やローンの活用可能性も含めて総合的に判断することが大切です。

このように、固定資産税・都市計画税という毎年のランニングコストと、解体・リフォームといった一時的な大きな支出をあらかじめ見積もっておくことで、「売却・賃貸・解体・リノベーション」のどの選択肢を取った場合に、家計と老後資金、相続後の負担がどう変わるのかを具体的に比較検討できるようになります。終活で実家じまいの方針を決める際には、必ず費用と税金をセットで確認し、家族全員が納得できる判断材料をそろえておきましょう。

6. 専門家への相談で損を減らすポイント

6.1 不動産会社の選び方と査定で確認すべき点

空き家問題と終活をスムーズに進めるうえで、不動産会社選びは実家じまいの成否を左右する重要なステップです。立地や築年数、老朽化の程度によっては、同じ物件でも査定額や提案内容に大きな差が出るため、1社だけの話で決めず、複数の不動産会社から情報を集めて比較することが損を減らす第一歩になります。

まず、不動産会社には大きく分けて全国展開している大手と、地域密着型の中小があります。駅前の店舗だけでなく、空き家対策や古家付き土地の売却実績があるかどうかも確認しましょう。特に地方の実家の場合、その地域の相場や買い手のニーズをよく知っている地元業者がいるかどうかは非常に重要です。

比較項目

確認のポイント

空き家・古家の取扱実績

空き家や築古住宅、地方の実家など、類似物件の売却事例や成約までの期間を具体的に聞く。

査定の根拠

路線価、公示地価、近隣の成約事例など、どのデータをもとに査定しているかを説明してもらう。

販売戦略

インターネット広告、店頭掲示、チラシ配布など、どのように買い手を探すのか具体的な方法を確認する。

担当者の対応

空き家問題や相続の事情に配慮しながら、メリット・デメリットを率直に伝えてくれるかを見極める。

買取・売却の選択肢

仲介による売却だけでなく、自社買取や提携業者による買取の可否と条件を聞いておく。

査定を依頼する際は、机上査定だけでなく、できるだけ訪問査定をしてもらい、建物の老朽化やシロアリ被害、雨漏りなど、将来的に修繕費がかかりそうなポイントも確認してもらいましょう。「いくらで売れるか」だけでなく、「売るためにどれくらい費用がかかるか」「どのくらいの期間で売れそうか」まで把握することが、終活と資金計画を両立させるうえで欠かせません。

また、媒介契約(専属専任媒介・専任媒介・一般媒介)の種類によって、不動産会社の義務や売却活動の報告頻度が変わります。契約前に、レインズ(指定流通機構)への登録時期や販売状況の報告方法を確認し、囲い込みを避けるためにも、契約内容を理解したうえで信頼できる会社・担当者を選ぶことが大切です。

6.2 司法書士や弁護士に相談したほうがよいケース

空き家と相続が絡む実家じまいでは、不動産会社だけでは対応できない法的な手続きやトラブルが発生することがあります。そのような場合、登記や相続手続きに関わる部分は司法書士、紛争やトラブルが発生している場合は弁護士というように、役割に応じて専門家を使い分けることが重要です。

司法書士に相談したほうがよい主なケースとしては、次のようなものがあります。

  • 親名義のままになっている実家を、相続人名義に変更する相続登記を行いたい場合

  • 相続人が多く、遺産分割協議書の作成や必要書類の収集が煩雑になっている場合

  • 生前のうちに家族信託や遺言書の作成を通じて、将来の空き家問題を予防したい場合

一方で、弁護士への相談が適しているのは、次のようなトラブルを含むケースです。

  • 相続人同士の話し合いがこじれてしまい、遺産分割協議がまとまらない場合

  • 空き家を巡って、兄弟姉妹の一部が売却に反対している、あるいは連絡が取れない場合

  • 空き家の管理不全により近隣からクレームや損害賠償請求を受けている場合

  • 共有名義の持分だけ売却したい、あるいは他の共有者の持分を買い取りたい場合

「どこまでが司法書士の仕事で、どこからが弁護士の仕事なのか」が分からないときは、まずはどちらかに相談し、必要に応じて他の専門家を紹介してもらう方法も有効です。特に終活の一環として実家じまいを検討している段階であれば、早めに司法書士に相談し、相続登記や名義整理の方針を決めておくことで、親が亡くなった後の手続きを大幅に軽減できます。

相談先を選ぶ際には、「相続・遺言」「空き家対策」などの分野を得意としているか、初回相談料や報酬体系が分かりやすく示されているかを確認し、費用だけでなく、説明の分かりやすさや家族の事情への配慮なども含めて総合的に判断することが重要です。

6.3 税理士に相続税や贈与税を相談するメリット

空き家となる実家をどう扱うかは、相続税や譲渡所得税、贈与税などの税金と切り離して考えることができません。売却・賃貸・解体・生前贈与といった選択肢のどれを選ぶかで、将来支払う税金の総額が大きく変わる可能性があるため、早い段階で税理士にシミュレーションを依頼することが賢い終活につながります。

税理士に相談する主なメリットとして、次のような点が挙げられます。

相談テーマ

税理士に相談するメリット

相続税の試算

土地と建物の評価額を前提に、現金や他の財産も含めた相続税額の目安を把握できる。

生前贈与の活用

贈与税の基礎控除や配偶者控除などを踏まえ、無理のない範囲で生前に移転しておく方法を検討できる。

売却時の税金

譲渡所得の概算計算や、適用可能な特例・控除制度の有無を確認し、売却タイミングの判断材料になる。

賃貸活用時の所得税

家賃収入にかかる所得税や経費計上の考え方を整理し、手取り額のイメージを持てる。

固定資産税の負担

土地の利用状況による税額の違いや、長期的な負担見込みを踏まえて活用方針を検討できる。

税制は毎年のように改正されるため、インターネット上の情報だけを頼りに判断するのは危険です。特に、マイホーム売却時の特例や、小規模宅地等の特例などは条件が細かく、「自分のケースに本当に当てはまるのか」を税理士に確認してから実行に移すことが、予期せぬ追徴課税を防ぐことにつながります。

終活と空き家対策を同時に考えるのであれば、親が元気なうちに、家族で税理士の面談に同席するのも有効です。親の年金収入や貯蓄、今後の医療・介護費の見込みも含めて相談することで、「どのタイミングで実家を手放すのが、家族全体にとって最も無理がなく、税金面でも有利なのか」を冷静に検討することができます。

このように、不動産会社・司法書士・弁護士・税理士というそれぞれの専門家を上手に組み合わせることで、感情的になりがちな実家じまいを客観的に整理でき、結果として空き家問題と終活を「損をしない形」で前向きに進めることが可能になります。

7. 空き家問題と終活に失敗したケースと成功したケース

同じように「地方にある実家」「親の高齢化」「相続」という条件を抱えていても、空き家問題と終活にきちんと向き合った家庭と、後回しにした家庭とでは、負担や結果が大きく変わります。ここでは、実際に起こりがちな失敗ケースと成功ケースを通して、実家じまい・生前整理・相続対策をどのタイミングでどのように進めるべきかを具体的にイメージできるように整理します。

7.1 実家を放置して特定空き家になってしまった事例

地方の戸建てに住んでいた両親が相次いで亡くなり、首都圏で暮らす長男・次男が相続人になったものの、「とりあえず今は忙しいから」「落ち着いたら相続登記や片づけを考えればいい」と先延ばしにし続けた結果、実家は誰も住まない空き家になり、管理不全の状態が数年続きました。

草木は伸び放題となり、瓦の一部が落ち、台風のたびに近隣住民から「屋根が飛んでこないか心配」「庭の雑草に害虫が発生している」と役所に相談が入るようになります。自治体からは何度も文書で「適切な管理を行うように」と指導が届きましたが、兄弟は仕事や自分たちの家庭を優先し、実家の片づけや売却を本格的に検討することなく、対応を先延ばしにし続けてしまいました。

やがて、現地調査を行った自治体から「管理不全」であることを理由に、空き家対策に関する法律に基づき、実家が「特定空き家」に該当し得るとの通知が届きます。兄弟が慌てて現地に向かうと、室内は湿気でカビが広がり、シロアリ被害も疑われる状態でした。建物の傷みが激しく、買い手がつきにくいだけでなく、解体費用も高額になることが判明し、兄弟はショックを受けます。

さらに、相続登記をしていなかったため、名義が亡くなった親のままで不動産会社との売買契約がすぐには結べず、司法書士への依頼費用や登録免許税など、想定していなかった出費も一気に発生しました。最終的には解体を選ばざるを得ず、解体費用・固定資産税・草刈りや片づけの外注費を合計すると、兄弟が自腹で負担した金額は数百万円規模に膨らみました。

この事例を時系列で整理すると、次のようになります。

タイミング

出来事・判断

発生した問題

親が存命中

実家の老朽化が進むが、「そのうちリフォームするか考えよう」として具体的な実家じまい・生前整理の話し合いをしなかった。

親も子も「誰が将来この家を引き継ぐか」「売却や解体の可能性」を真剣に考えないまま時間だけが経過。

親の死亡直後

相続手続き全般を後回しにし、相続登記もせず、遺品整理も最小限のまま放置した。

不動産の名義が親のまま固定され、売却や賃貸の検討をしようとしても手続きが複雑化。

数年経過後

草木の繁茂や建物の傷みが進んだ状態で、ようやく自治体からの文書で空き家問題を自覚。

近隣からの苦情が増え、台風時の倒壊や飛散物による損害賠償リスクが現実的なものとなる。

特定空き家化

自治体から「特定空き家」に該当し得る旨の通知を受け、慌てて不動産会社や解体業者に相談。

建物の価値がほぼゼロとなり、土地だけでは買い手がつきにくく、解体費用も相場より高くなる可能性が生じた。

最終的な対応

兄弟で話し合い、費用負担割合をめぐって一時的に口論になりながらも、解体を選択。

売却益はほとんど出ず、解体費用・固定資産税・専門家費用を合算すると、「親からの財産」どころか持ち出しとなった。

この失敗事例から分かるのは、「実家に誰も住まなくなった段階」で、空き家問題と終活を一体のテーマとして早めに動き出さないと、建物の価値だけでなく、家族関係や老後資金にも悪影響が及ぶという点です。特に、相続登記の放置や遺品整理・生前整理の先送りは、時間が経てば経つほど手間と費用が増えることを示しています。

7.2 早めの実家じまいで兄弟間トラブルを防げた事例

一方で、同じように地方に実家を持ちながらも、親が元気なうちに家族全員で実家じまいと終活を進めたことで、相続時のトラブルを防げた家庭もあります。

地方の中核都市にある築35年の戸建てに住む両親には、東京在住の長女と大阪在住の長男がいました。両親は70代に入り、階段の上り下りがつらくなってきたこともあり、かかりつけの医師からも「将来の住まい方や介護のことを家族で話し合っておいた方がよい」とアドバイスを受けます。これをきっかけに、長女が中心となって「実家と相続について話す家族会議」をオンラインで開きました。

家族会議では、「将来、誰かが実家に住む予定はあるか」「2人とも地方には戻らないとしたら、家をどう扱うか」という点を率直に話し合い、「誰も住まないのであれば、両親が元気なうちに売却して老後の生活資金や介護費用に充てる」という方針が早い段階で共有されました。

その後、家族は次のようなステップで実家じまいを進めました。

準備のステップ

実施した内容

トラブルを防げたポイント

現状把握

地元の複数の不動産会社に査定を依頼し、売却価格の目安や売れるまでの期間を確認した。併せて、耐震性やシロアリ被害の有無など建物の状態もチェック。

親・子ども・業者の三者で現地確認を行うことで、「家の価値」と「老朽化リスク」を全員が同じ情報として共有できた。

家族間の合意形成

査定結果をもとに、「売却したらいくらくらいになるか」「売却代金は両親の老後資金として使い、残りを相続として考える」など、具体的な数字を含めて話し合い、兄弟姉妹で合意。

事前に「誰がどのくらい受け取るか」「親の介護費や医療費はどう負担するか」を言葉とメモで残したことで、のちの誤解や不信感を防げた。

生前整理・遺品整理の前倒し

休日ごとに兄弟姉妹が実家に集まり、「残したいもの」「写真に撮って処分するもの」「思い切って手放すもの」を親と一緒に仕分け。大型家具や家電は買取業者と不用品回収を併用して整理。

親が自分の意思で「残したい物」を決められたため、売却後に「勝手に捨てられた」と感じることがなく、心理的なわだかまりが生まれなかった。

専門家への相談

司法書士に相談し、売却後の登記手続きや将来の相続の流れを確認。必要に応じて税理士にも相談し、売却益や相続税への影響も事前に把握した。

曖昧なままにせず、専門家から客観的な説明を受けることで、「誰かが得をした・損をした」という印象を家族内に持たせずに済んだ。

売却と住み替え

売却した資金を元手に、両親は駅近のバリアフリー型マンションへ住み替え。余った資金の一部は、将来の介護サービス利用のための預貯金として確保。

両親の生活の安全性が高まり、子ども世代も「遠方でも見守りやすい」環境が整ったことで、介護に関する不安が大きく軽減された。

この事例では、「親がまだ判断能力も体力もあるうちに、終活と空き家対策を一体として話し合った」ことが最大のポイントです。早めの実家じまいによって、兄弟間で「どちらがどれだけ負担したか」「売却金をどう分けるか」をめぐる感情的な対立を避けられただけでなく、両親自身も「迷惑をかけずに済んだ」という安心感を持てました。

また、売却までのプロセスを通じて、生前整理・遺品整理を段階的に進められたため、親が亡くなった後の相続手続きは、書類上の手続きが中心となり、子どもたちの心理的・時間的負担を大幅に減らす結果となりました。

7.3 賃貸活用で老後資金を確保できた事例

三つ目の事例は、実家を手放さずに、空き家になる前に賃貸活用へと切り替えることで、老後の家計を安定させたケースです。

地方都市の郊外にある築30年の戸建てに暮らしていた夫婦は、65歳を機に都心近くに住む子どもたちのそばに移り住むことを検討していました。ただし、実家の土地は先祖代々受け継いできたもので、「すぐに売却してしまうのは気が進まない」という思いもありました。

そこで夫婦は、「自分たちは賃貸マンションに住み替え、実家は賃貸物件として貸し出す」ことで、家賃収入を老後資金の一部にするという選択肢を検討することにしました。子どもたちとも話し合い、「いずれ相続するにしても、空き家のまま放置するよりは、きちんと管理された賃貸物件として維持した方が良い」という結論に至ります。

夫婦と子どもたちは、賃貸活用にあたって次のような点を整理しました。

検討事項

具体的な対応

得られた効果

物件の状態と必要なリフォーム

不動産会社とリフォーム会社に現地を見てもらい、水回りと外壁を中心に最低限必要な工事内容と費用を見積もり。過度な高級仕様にはせず、近隣の賃貸需要に合ったリフォームに絞った。

初期費用を抑えつつ、入居者が付きやすい状態を作ることで、空室リスクとランニングコストのバランスを取ることができた。

賃料設定と管理方式

周辺の賃貸相場を調査し、不動産会社から複数の賃料設定案を出してもらった上で、管理会社による一括管理を選択。家賃の集金やクレーム対応、定期的な巡回点検を委託した。

自分たちが遠方に住んでいても、日常的な管理業務をプロに任せられたことで、精神的な負担を大幅に軽減できた。

税金と収支のシミュレーション

税理士に相談し、固定資産税や都市計画税、賃貸収入にかかる所得税を踏まえて、年間の収支を試算。将来の修繕費用や入居者入れ替え時の原状回復費も見込んで長期的な計画を立てた。

「毎月いくらの純粋なプラス収入になるか」を事前に把握できたため、年金と組み合わせた老後の家計設計が具体的になり、不安が軽減された。

将来の相続について

子どもたちとも共有し、「当面は親世代の老後資金として賃貸収入を使い、将来相続する際には、物件を継続して賃貸に出すか、売却するかをその時点で検討する」という方針を文書に残した。

親の代・子の代で方針が食い違った場合にも、まずは親の意思をベースに話し合えるようになり、家族間の認識ギャップを最小限に抑えられた。

空き家化リスクの回避

入居者がいない期間でも、管理会社による定期巡回と簡易清掃を契約内容に盛り込み、長期放置による老朽化や近隣トラブルの種を減らした。

実家が「誰も住まない管理不全の空き家」になることを避け、地域との関係も良好に保てた。

こうした段取りを経て、実家は数カ月以内に入居者が見つかり、家賃収入の一部を夫婦の生活費と医療費に充てることができました。年金だけでは心細かった家計に、毎月安定した収入が加わったことで、「老後の生活を切り詰めなければならない」という不安が大きくやわらぎました。

また、子どもたちにとっても、「遠方の実家を自分たちで管理しに行かなければならない」という将来の負担が軽くなり、空き家問題と終活を親世代と一緒に考えたことで、相続後の見通しを共有できたことが大きな安心材料になりました。

三つの事例を通じて共通して見えてくるのは、空き家問題と終活は「親が元気なうち」から家族で話し合い、実家じまい・売却・賃貸活用などの選択肢を早期に比較検討することで、経済的な損失だけでなく、家族関係のトラブルも大きく減らせるという点です。実家をどうするかは、単なる不動産の問題ではなく、親の老後の暮らし方と子ども世代のライフプランをつなぐ重要なテーマであり、前向きな終活の一環として早めに向き合うことが、結果的に「損をしない実家じまい」につながります。

8. まとめ

空き家問題と終活を放置すると、「固定資産税などの維持費負担」「特定空き家に指定されるリスク」「近隣トラブル・損害賠償リスク」「相続人同士の争い」といった不利益が、時間の経過とともに大きくなります。親が亡くなってから慌てて対応しようとすると、感情的な対立も生じやすく、結果的に「お金」「時間」「人間関係」のすべてで損をする可能性が高まります。

こうしたリスクを避けるためには、「実家じまい」を終活の重要なテーマとして位置づけ、親が元気なうちから家族で話し合いを重ねることが不可欠です。親の希望や思い出を尊重しつつ、子ども世代の生活拠点・収入・将来設計など現実的な条件をすり合わせることで、後悔の少ない選択肢を導き出しやすくなります。

そのうえで、不動産の状態と市場価値を客観的に把握し、「売却」「賃貸」「解体・更地」「活用(賃貸・駐車場・事業用など)」といった選択肢を比較検討することが重要です。空き家のまま放置すれば、老朽化により修繕コストがかさみ、資産価値が下がる一方で税負担は続きます。早めに方針を決めて動くほど、選べる選択肢は増え、損失を抑えやすくなります。

相続登記や名義変更を含む法的な整理も、終活の一環として計画的に進める必要があります。相続登記を長年放置すると、相続人が増え続けて権利関係が複雑化し、売却や活用が事実上困難になるケースがあります。司法書士や弁護士、税理士などの専門家に早い段階で相談すれば、相続登記の義務化への対応や相続税・贈与税の負担軽減策など、法的・税務的なリスクを抑えながら手続きを進めることができます。

また、遺品整理・生前整理を段階的に進めておくことも、実家じまいをスムーズにする大切なポイントです。親と一緒に「残したいもの」「処分してよいもの」を話し合っておけば、死後に家族が迷ったり対立したりする場面を減らせます。必要に応じて遺品整理業者を活用することで、短期間での片付けや遠方からの対応も現実的になりますが、費用相場やサービス内容を比較し、悪質な業者を避ける目利きも欠かせません。

実家じまいの成否は、「いつから動き始めるか」と「誰と情報共有するか」に大きく左右されます。親が元気なうちにチェックリストを使って現状を確認し、介護が必要になった段階・死亡後に必要な手続きまでを見通したスケジュールを家族で共有しておくことで、急な事態にも落ち着いて対応しやすくなります。これにより、兄弟姉妹間のトラブルを防ぎ、老後資金や生活設計にも余裕を持たせることが可能になります。

実際に、空き家を長年放置して特定空き家に指定され、行政からの指導や解体費用の負担に追い込まれた事例がある一方で、親が元気なうちから実家じまいの話し合いと資産整理を進めた家庭では、円滑な売却や賃貸活用により老後資金を確保し、兄弟間の関係も良好に保てたケースがあります。両者の違いは、「問題を先送りにしたか」「早めに向き合ったか」という一点に集約されます。

空き家問題と終活は切り離して考えるのではなく、「将来の家族の負担を減らし、自分らしい老後と最期を実現するための一連のプロセス」として捉えることが重要です。親子・兄弟姉妹で早めに話し合い、専門家の力も借りながら、実家じまいの方針を具体的に決めていくことが、損をしないための最も現実的で確実な対策と言えます。

コラムを書いた人

篠原 博之

行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表

個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属

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