外国人を「技術・人文知識・国際業務」で雇用する際の注意点|業務内容・研修・申請手続きを解説
外国人ビザ申請(在留資格)
公開日:2026/5/3
更新日:2026/5/3
外国人材を採用する企業が増える中で、特に相談が多い在留資格の一つが「技術・人文知識・国際業務」です。
一般的には「技人国」と呼ばれることもあり、エンジニア、通訳・翻訳、海外営業、マーケティング、企画、貿易業務、総合職など、幅広い職種で利用される在留資格です。
一方で、名前の印象だけで判断してしまうと、注意が必要です。
「外国人を正社員として採用するから技人国で大丈夫」
「大学を卒業しているから、どんな仕事でもできる」
「最初は現場作業から始めても問題ない」
このように考えていると、在留資格変更許可申請や在留資格認定証明書交付申請で不許可になる可能性があります。
この記事では、出入国在留管理庁の資料をもとに、「技術・人文知識・国際業務」で外国人を雇用する際に企業が確認すべきポイントを解説します。
技術・人文知識・国際業務とは
「技術・人文知識・国際業務」は、日本の会社などとの契約に基づいて、自然科学や人文科学の知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。
少しわかりにくい表現ですが、簡単にいうと、次のような専門性を活かす仕事が対象になります。
技術分野の例
システムエンジニア
プログラマー
機械設計
電気通信技術者
建築・土木関係の技術職
CAD・CAEを用いた設計、解析業務
人文知識分野の例
経理・会計
法務
人事
総務
企画
マーケティング
コンサルティング
貿易実務
営業管理
国際業務分野の例
翻訳
通訳
語学指導
海外取引業務
広報・宣伝
海外向けマーケティング
外国人顧客対応
ただし、これらの職種名に当てはまれば必ず許可されるわけではありません。
重要なのは、実際に従事する業務が、本人の学歴・専攻・実務経験・語学力などと関連し、専門的な知識や能力を必要とする内容になっているかどうかです。
「大学卒業なら何でもできる」わけではない
技術・人文知識・国際業務では、原則として、従事しようとする業務に関連する科目を専攻して大学などを卒業していること、または一定の実務経験があることが求められます。
ここで注意したいのは、学歴と業務内容の関係です。
大学卒業者の場合は、専攻と業務内容の関連性について比較的柔軟に判断される傾向があります。
一方で、専門学校卒業者の場合は、専攻した内容と従事する業務との間に、より強い関連性が求められます。
たとえば、情報工学を学んだ方がシステムエンジニアとして働く場合や、経営学を学んだ方が海外取引・マーケティング業務に従事する場合は、関連性を説明しやすいケースといえます。
反対に、学んだ内容と業務内容のつながりが弱い場合は、なぜその業務に従事できるのか、どのような専門知識を活かすのかを丁寧に説明する必要があります。
単純作業や現場作業は原則として対象外
技術・人文知識・国際業務で特に注意が必要なのが、単純作業や現場作業との関係です。
この在留資格は、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする業務を対象としています。
そのため、次のような業務を主な職務とする場合は、技術・人文知識・国際業務に該当しない可能性が高くなります。
工場のライン作業
弁当や食品の箱詰め作業
飲食店での接客や調理
小売店での店頭販売
清掃業務
倉庫内の仕分け作業
単純な荷物運搬
もちろん、会社の中で一時的に現場を理解する必要がある場合もあります。
しかし、実際の業務の大半が単純作業や反復的な作業である場合、「技術・人文知識・国際業務」に該当しないと判断される可能性があります。
外国人本人の学歴や語学力が高くても、従事する業務そのものに専門性がなければ許可は難しくなります。
入社後の実務研修は認められるのか
企業からよく相談されるのが、入社後の実務研修です。
たとえば、総合職として採用した外国人社員に対して、入社後しばらく店舗や現場で研修を受けてもらうケースがあります。
このような研修については、一定の条件を満たす場合、技術・人文知識・国際業務の在留資格内で認められることがあります。
ポイントは、次のような点です。
日本人の大卒社員にも同様の研修が行われていること
外国人社員だけに設定された研修ではないこと
将来の専門業務に必要な研修であること
在留期間中の活動全体から見て、研修が大半を占めないこと
研修後に技人国に該当する業務へ移行する見込みがあること
キャリアステップや研修計画を説明できること
つまり、「現場作業をさせたいから研修という形にする」という考え方では危険です。
研修として認められるためには、企業としての合理的な研修制度があり、日本人社員との取扱いにも不自然な差がなく、将来的に専門業務へ移行することが具体的に示されている必要があります。
特に、研修期間が長くなる場合には、研修計画やキャリアステップの説明が重要になります。
報酬は日本人と同等額以上であることが必要
技術・人文知識・国際業務では、報酬についても注意が必要です。
外国人だからという理由で、日本人より低い給与にすることはできません。
同じような業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要です。
実際に、同種の業務を行う日本人新卒社員よりも外国人社員の給与が低かったことを理由に、不許可となる例も示されています。
採用時には、次の点を確認しておくことが大切です。
同じ職種の日本人社員と給与水準に差がないか
基本給、手当、賞与の内容が説明できるか
労働条件通知書や雇用契約書の内容が明確か
業務内容と給与額に不自然な点がないか
報酬額は、単に金額だけでなく、業務内容、会社の規模、同種職種の給与水準などと合わせて見られる可能性があります。
外国人を採用する前に確認すべきこと
外国人を雇用する場合、まず確認すべきなのは在留カードです。
在留カードでは、次の点を確認します。
在留資格
在留期間
就労制限の有無
資格外活動許可の有無
在留カードの有効期限
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの身分系在留資格は、入管法上、職種の制限はありません。
一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格の場合は、職務内容がその在留資格に該当している必要があります。
また、「留学」や「家族滞在」の方をアルバイトとして雇用する場合は、資格外活動許可の有無を確認する必要があります。
通常、資格外活動許可では、原則として週28時間以内という制限があります。
さらに、風俗営業が営まれている営業所での活動などは認められていません。
外国人を採用する際は、「働ける在留資格を持っているか」だけでなく、「予定している業務に従事できるか」まで確認することが大切です。
新しく外国人を採用する場合の手続き
外国人を新たに採用する場合、状況によって必要な手続きが変わります。
海外から外国人を呼び寄せる場合
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合は、原則として「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
この申請では、外国人本人の学歴や職歴だけでなく、受入れ企業の事業内容、雇用条件、予定している職務内容などを説明する必要があります。
日本国内の留学生などを採用する場合
すでに日本に在留している留学生などを正社員として採用する場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。
たとえば、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更するケースです。
この場合、変更許可が下りる前に、報酬を受ける就労活動を始めることはできません。
入社日や勤務開始日を決める際には、申請の審査期間も考慮する必要があります。
すでに就労資格を持っている外国人を採用する場合
すでに「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格を持っている方を中途採用する場合、採用後の業務内容が現在の在留資格に該当するのであれば、必ずしも在留資格変更許可申請が必要になるわけではありません。
ただし、本人による「契約機関に関する届出」などが必要になる場合があります。
また、在留期限が近い場合は、在留期間更新許可申請も必要です。
採用後の業務内容が現在の在留資格で行えるか不安な場合は、「就労資格証明書」の交付申請により確認する方法もあります。
雇用理由書は必要か
技術・人文知識・国際業務の申請では、「雇用理由書」は法律上必ず提出しなければならない書類ではありません。
しかし、実務上は、職務内容や採用理由を具体的に説明するために、雇用理由書を作成するケースが多くあります。
特に、次のような場合は、雇用理由書で丁寧に説明することが重要です。
学歴と業務内容の関連性が一見わかりにくい場合
専門学校卒業者を採用する場合
会社の事業内容がわかりにくい場合
新規事業や海外展開に関する業務の場合
研修期間がある場合
総合職採用で配属先やキャリアステップの説明が必要な場合
雇用理由書では、単に「人手不足のため採用する」と書くだけでは不十分です。
なぜその外国人を採用するのか。
どのような専門知識や能力を活かすのか。
どの部署で、どのような業務に従事するのか。
本人の学歴・職歴と業務内容がどのようにつながるのか。
これらを具体的に説明することで、申請内容の説得力が高まります。
不許可になりやすいケース
技術・人文知識・国際業務では、次のようなケースで不許可リスクが高くなります。
1. 業務内容が単純作業に近い
専門知識を必要としない現場作業や反復作業が中心の場合、技人国に該当しないと判断される可能性があります。
2. 学歴・専攻と業務内容の関連性が弱い
特に専門学校卒業者の場合、専攻内容と業務内容の関連性が重要です。
関連性が弱い場合は、履修科目や職務内容を丁寧に説明する必要があります。
3. 会社の実態が不明確
事業所の所在地、事業内容、売上、従業員数、取引先、業務量などに不自然な点がある場合、受入れ機関としての安定性・継続性が疑われることがあります。
4. 給与が日本人より低い
同種の業務に従事する日本人と比較して報酬が低い場合、不許可となる可能性があります。
5. 留学中の資格外活動違反がある
留学生を採用する場合、過去に資格外活動許可の範囲を超えてアルバイトをしていたことが判明すると、在留状況が良好でないと判断される可能性があります。
6. 研修という名目で長期間現場作業をさせる
研修後に専門業務へ移行する具体的な見込みがない場合や、外国人だけに現場研修を課している場合は、研修として認められにくくなります。
企業側が準備しておきたい資料
外国人を技術・人文知識・国際業務で雇用する場合、企業側では次のような資料を整理しておくとよいでしょう。
会社案内
登記事項証明書
決算書
法定調書合計表
雇用契約書または労働条件通知書
職務内容説明書
雇用理由書
組織図
配属部署の説明資料
研修計画書
キャリアステップ表
日本人社員との給与比較資料
本人の学歴・職歴と業務内容の関連性を説明する資料
必要書類は、会社のカテゴリーや申請内容によって異なります。
ただ、単に最低限の書類をそろえるだけではなく、「なぜこの人が、この会社で、この業務に従事する必要があるのか」を説明できる状態にしておくことが大切です。
まとめ
技術・人文知識・国際業務は、外国人を正社員として雇用する際によく利用される在留資格です。
しかし、幅広い職種で使われる一方で、どのような業務でも認められるわけではありません。
特に重要なのは、次の点です。
業務内容に専門性があること
学歴・専攻・職歴と業務内容に関連性があること
単純作業や現場作業が主な業務ではないこと
報酬が日本人と同等額以上であること
研修がある場合は、日本人社員との取扱いやキャリアステップを説明できること
会社の事業内容や雇用条件を明確に説明できること
外国人雇用では、採用してから手続きを考えるのではなく、採用前の段階で在留資格の見通しを確認することが重要です。
行政書士しのはら事務所では、技術・人文知識・国際業務の在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、外国人雇用に関するご相談をお受けしています。
外国人材の採用を検討している企業様は、業務内容や雇用条件が在留資格に合っているか、早めに確認することをおすすめします。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第2408248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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