公正証書のデジタル化で終活はどう変わる?遺言・任意後見を行政書士が解説
終活
公開日:2026/5/3
更新日:2026/5/3
近年、終活に関する関心が高まっています。
「自分に万が一のことがあったとき、家族に迷惑をかけたくない」
「財産の分け方をきちんと決めておきたい」
「将来、判断能力が低下したときのことが心配」
このような理由から、遺言書の作成や任意後見契約について相談される方が増えています。
また、令和7年8月4日付で、日本公証人連合会から日本行政書士会連合会に対して、遺言・任意後見等の制度普及に関する広報活動の連携や、公正証書のデジタル化に関する周知協力の依頼が行われています。
公正証書は、遺言や任意後見契約など、将来に備える重要な手続きで利用されることが多い制度です。
今後、公正証書のデジタル化が進むことで、終活に関する手続きも少しずつ利用しやすくなっていくことが期待されています。
この記事では、終活を考えるうえで知っておきたい公正証書遺言、任意後見契約、そして公正証書のデジタル化について、わかりやすく解説します。
公正証書とは
公正証書とは、公証人が作成する公的な文書です。
契約書や遺言書などを公正証書にすることで、本人の意思や契約内容を明確に残すことができます。
公証人という法律の専門家が関与するため、後日のトラブル予防にもつながります。
終活の場面でよく利用される公正証書には、主に次のようなものがあります。
公正証書遺言
任意後見契約公正証書
尊厳死宣言公正証書
死後事務委任契約公正証書
特に、公正証書遺言と任意後見契約は、将来の相続や生活支援を考えるうえで重要な制度です。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言書です。
自筆証書遺言のように自分で全文を書く必要はなく、遺言者の意思を公証人が確認したうえで作成します。
作成された原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクを抑えやすいという特徴があります。
公正証書遺言を作成しておくことで、たとえば次のような意思を残すことができます。
誰にどの財産を相続させるか
特定の人に財産を遺贈するか
相続人間の争いをできるだけ防ぐ内容にするか
遺言執行者を誰にするか
相続は、財産の額が大きい場合だけでなく、不動産がある場合、相続人同士の関係が複雑な場合、再婚している場合、子どもがいない場合などにもトラブルになりやすい分野です。
「うちは大きな財産がないから大丈夫」と思っていても、実際には預貯金、不動産、車、株式、事業用資産などの整理が必要になることがあります。
公正証書遺言は、残された家族の負担を軽くするための準備としても有効です。
任意後見契約とは
任意後見契約とは、将来、自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ信頼できる人に支援を依頼しておく契約です。
たとえば、認知症などにより自分で財産管理や契約手続きが難しくなった場合、任意後見人が本人に代わって必要な手続きを支援します。
任意後見契約で支援の対象となる内容には、次のようなものがあります。
預貯金の管理
家賃や施設利用料などの支払い
介護サービスや医療に関する契約
不動産や重要書類の管理
各種行政手続き
大切なのは、元気なうちに自分で支援してくれる人を選べるという点です。
判断能力が低下してからでは、自分で契約内容を決めることが難しくなります。
そのため、任意後見契約は「まだ元気だから必要ない」と考えるのではなく、元気なうちに準備しておく制度といえます。
遺言と任意後見は役割が違う
終活の相談では、遺言と任意後見を同じようなものと考えている方もいます。
しかし、両者の役割は異なります。
遺言は、主に亡くなった後の財産承継について定めるものです。
一方、任意後見契約は、主に生きている間に判断能力が低下した場合の支援について定めるものです。
つまり、
亡くなった後に備えるのが遺言
生きている間の判断能力低下に備えるのが任意後見
という関係です。
終活を考える際には、どちらか一方だけではなく、必要に応じて両方を検討することが大切です。
公正証書のデジタル化とは
近年、公正証書の作成手続きについても、デジタル化の動きが進んでいます。
日本公証人連合会の文書では、民事関係手続きの迅速化・効率化などを目的として、公正証書のデジタル化やリモート作成手続きの導入に関する周知が行われています。
これまで、公正証書の作成は原則として公証役場に出向いて行うイメージが強いものでした。
しかし、今後は制度改正により、一定の手続きについてデジタル技術を活用した方法が広がっていくことが見込まれています。
具体的には、電子的な記録による公正証書の作成や、ウェブ会議を利用した手続きなどが想定されています。
ただし、すべての手続きがすぐにオンラインで完結するわけではありません。
本人確認、意思確認、必要書類の準備などは、引き続き慎重に行う必要があります。
特に、遺言や任意後見契約は本人の意思が非常に重要な手続きです。
デジタル化によって便利になる部分がある一方で、内容の検討や事前準備の重要性がなくなるわけではありません。
デジタル化で終活の相談はしやすくなる可能性がある
公正証書のデジタル化が進むことで、終活に関する手続きは、これまでより相談しやすくなる可能性があります。
たとえば、高齢の方や外出が難しい方にとって、公証役場へ何度も足を運ぶことは負担になる場合があります。
また、家族が遠方に住んでいる場合、関係者の日程調整が難しいこともあります。
デジタル技術を活用した手続きが広がれば、こうした負担が軽くなることも期待できます。
ただし、終活の準備で本当に大切なのは、手続きの方法そのものよりも、まず自分の希望を整理することです。
どの財産を誰に残したいのか
家族にどのような負担をかけたくないのか
将来、誰に生活や財産管理を任せたいのか
医療や介護について、どのような希望があるのか
死後の手続きを誰にお願いしたいのか
こうした内容を整理したうえで、遺言や任意後見、死後事務委任契約などを検討することが大切です。
行政書士に相談できること
行政書士は、終活に関する書類作成や手続きの相談をお受けすることができます。
たとえば、次のようなご相談に対応できます。
遺言書作成のための事前整理
財産目録の作成
相続人関係の整理
任意後見契約の準備
死後事務委任契約の検討
公証役場との事前調整
必要書類の収集サポート
もちろん、相続人同士で争いがある場合や、法的紛争に発展している場合は、弁護士の対応が必要になることがあります。
一方で、まだ争いがなく、これから自分の意思を整理しておきたい段階であれば、行政書士に相談することで、必要な準備を進めやすくなります。
「何から始めればよいかわからない」という段階でも、まずは現状を整理することが大切です。
終活は早めの準備が大切です
終活という言葉を聞くと、「まだ自分には早い」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、遺言や任意後見は、判断能力が十分にあるうちでなければ、希望どおりに準備できない場合があります。
特に、任意後見契約は、将来の判断能力低下に備えて、元気なうちに契約しておく制度です。
また、遺言も、自分の意思を明確に残せるうちに作成しておくことが重要です。
終活は、人生の終わりだけを考えるものではありません。
自分のこれからを安心して過ごすため、そして大切な家族の負担を減らすための準備です。
まとめ
公正証書遺言や任意後見契約は、将来の相続や生活支援に備えるための大切な制度です。
日本公証人連合会も、遺言・任意後見等の制度普及や、公正証書のデジタル化に関する周知活動を進めており、今後は終活に関する手続きも少しずつ利用しやすくなっていくことが期待されます。
ただし、制度が便利になっても、本人の意思を整理し、必要な書類を準備することの大切さは変わりません。
行政書士しのはら事務所では、遺言書作成、財産目録の作成、任意後見契約、終活に関する各種書類作成についてご相談をお受けしています。
将来のことが少し気になり始めたら、早めに準備を始めてみてはいかがでしょうか。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第2408248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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