「一人親方」が建設業許可を取るメリットとデメリット
建設業許可
公開日:2025/11/14
更新日:2025/12/1
「元請けさんから『そろそろ建設業許可を取ったほうがいいよ』と言われたけど、
一人親方の自分に本当に必要なのか分からない……」
こんなモヤモヤ、けっこう多いです。
この記事では、一人親方が建設業許可を取るメリット・デメリットを整理します。
「今は許可なしでやっている個人事業主」を想定して書いているので、その前提で読んでください。
- 1.そもそも「一人親方」と建設業許可の関係
- 一人親方とは?
- 一人親方でも建設業許可は取れる?
- 2.建設業許可が必要になる基準(おさらい)
- 3.一人親方が建設業許可を取る5つのメリット
- メリット1:500万円以上の工事を直接受注できる
- メリット2:取引先・金融機関からの信用アップ
- メリット3:将来の法人化・経審への布石になる
- メリット4:元請けからの「丸投げ・安値受注」から少し卒業できる
- メリット5:コンプライアンス意識の高い元請けから選ばれやすい
- 4.一人親方が建設業許可を取る5つのデメリット
- デメリット1:許可取得にコストがかかる
- デメリット2:更新・決算変更届など、継続的な事務負担
- デメリット3:500万円要件など、取るまでのハードルが高いことも
- デメリット4:社会保険加入や帳簿付けなど、“ちゃんとした経営”を求められる
- デメリット5:許可を取っても、勝手に仕事が増えるわけではない
- 5.こんな一人親方は建設業許可を検討したほうがいい
- 6.一人親方が建設業許可を目指すときのステップ
- まとめ:「一人親方にとっての建設業許可」は“名刺の格上げ+将来への投資”
1.そもそも「一人親方」と建設業許可の関係
一人親方とは?
建設業界でいう一人親方は、
従業員を雇わず
自分の技術と道具で
元請けや工務店から仕事を請ける個人事業主
を指すのが一般的です。
法律上の特別な区分ではなく、労災保険・社会保険や現場の実務上の呼び名だと思っておけばOK。
一人親方でも建設業許可は取れる?
結論:条件を満たせば取れます。
「法人じゃないとダメ」「従業員がいないとダメ」ではありません。
ただし、
経営業務の管理責任者(経管)
専任技術者
財産的基礎(自己資本500万円など)
といった要件を、一人でどうクリアするかがポイントになります。
2.建設業許可が必要になる基準(おさらい)
一人親方でも、次のような工事を請け負うなら建設業許可が必要です。
工事一件の請負代金が税込500万円以上(建築一式以外)
建築一式工事なら、税込1,500万円以上または延べ面積150㎡以上の木造以外の建築一式工事
逆に言えば、
500万円未満の工事だけ
下請けとして小工事だけ
であれば、法的には「許可がなくても仕事はできる」状態です。
3.一人親方が建設業許可を取る5つのメリット
メリット1:500万円以上の工事を直接受注できる
最大のメリットはこれ。
許可がないと、500万円以上の仕事は必ず「許可業者経由」になります。
元請けから直接「この工事お願い」と言われても、金額が超えると受けられない
結局、どこかの許可業者が間に入り、中間マージンを抜かれる
許可を取れば、
元請け・ハウスメーカー・工務店からの受注の幅が広がる
お客さんから直接契約で大きめの仕事を受けられる
ようになり、売上単価アップにつながります。
メリット2:取引先・金融機関からの信用アップ
建設業許可は、ざっくり言うと
「この事業者は一定の経験・技術・お金を持っている」
と国・都道府県が認めた証明書です。
そのため、
新しい元請けから声がかかりやすくなる
下請けとして登録してもらいやすい
銀行から融資を受ける際の信用材料になる
など、目に見えない“信頼のラベル”として効いてきます。
特に、
「今後は会社を大きくしていきたい」「将来は法人化して公共工事も視野に」と考えている一人親方には大きな意味があります。
メリット3:将来の法人化・経審への布石になる
一人親方からスタートしても、
従業員を雇う
法人化する
公共工事や元請けメインにシフトする
といったステップアップは珍しくありません。
このとき、建設業許可を早めに取っておくと「実績年数」がカウントされるので、
経営事項審査(経審)を受けるとき
ランクアップを狙うとき
に有利になります。
「どうせ大きくするなら、早めに許可を取って実績を積んでおく」という戦略も十分アリです。
メリット4:元請けからの「丸投げ・安値受注」から少し卒業できる
許可のない一人親方は、どうしても
「安い単価で呼ばれる職人さん」
「元請け次第で仕事量が変わる立場」
になりがちです。
建設業許可を取ることで、
自分が小さな元請けとして動ける仕事が増える
見積り・契約を自分で主導しやすくなる
ので、価格交渉力が上がるケースも多いです。
もちろん許可を取っただけで単価が2倍になるわけではありませんが、
「丸投げで言い値」という状態から抜け出すキッカケにはなります。
メリット5:コンプライアンス意識の高い元請けから選ばれやすい
最近は大手ゼネコン・ハウスメーカーほど、
建設業許可の有無
社会保険加入状況
反社チェック
などを細かく見ています。
許可を持っている一人親方の方が、コンプラにうるさい元請けから声がかかりやすい傾向があり、
現場の安全管理がしっかりしている
無茶な工期・単価になりにくい
といった“働きやすい現場”に入れる可能性も上がります。
4.一人親方が建設業許可を取る5つのデメリット
もちろん、いいことばかりではありません。
一人親方にとってのデメリットもはっきりあります。
デメリット1:許可取得にコストがかかる
まずはお金の問題。
申請手数料(知事許可新規で9万円など)
行政書士に依頼するなら、報酬10万〜20万円前後が相場
会社設立や決算書の整備が必要なら、別途費用
一人親方にとって、トータル20万〜30万円クラスの出費になることも珍しくありません。
「今すぐ500万円以上の仕事が決まっている」「すぐに元が取れそう」という状況でなければ、慎重に考えていいポイントです。
デメリット2:更新・決算変更届など、継続的な事務負担
建設業許可は一度取って終わりではなく、維持コストがかかる許可です。
5年ごとの更新
毎期の決算変更届
役員・営業所などの変更があればそのたびに変更届
など、役所向けの手続きが定期的に発生します。
事務作業が苦手な一人親方だと、
つい後回しにしてしまう
期限を過ぎて「慌てて相談」というパターン
になりがちです。
行政書士に任せるなら、その分の報酬もランニングコストとして見ておく必要があります。
デメリット3:500万円要件など、取るまでのハードルが高いことも
一人親方の場合、特にネックになりやすいのが次の2つ。
経営業務の管理責任者(経管)の要件
一定年数の経営経験が必要
別業種での経験や、法人役員としての経験など、細かな判定がある
財産的基礎(自己資本500万円 or 預金残高証明など)
コツコツ貯めていないと、いきなりは用意しにくい
家族からの借入金で積む場合、スキームをきちんと組む必要がある
「今すぐ許可がほしい」と思っても、条件を満たすまで時間がかかるケースも多いです。
デメリット4:社会保険加入や帳簿付けなど、“ちゃんとした経営”を求められる
建設業許可を取ると、
社会保険の加入状況
会計帳簿・決算の内容
税務申告の整合性
なども、以前よりシビアに見られるようになります。
「税金は最低限、帳簿はほぼ付けていない」という一人親方スタイルだと、
許可を取ったあとに経理・労務を整えるコストがドンッとかかってきます。
言い換えると、
「きちんとした事業者としてやっていく覚悟があるか?」
を求められるのが建設業許可とも言えます。
デメリット5:許可を取っても、勝手に仕事が増えるわけではない
ここが一番誤解されがち。
建設業許可はあくまで「仕事を受ける資格」であって、
それだけで仕事が自動的に増える魔法のカードではありません。
営業・人脈づくり
元請けとの関係構築
見積り・現場管理の力
これらが伴ってはじめて、許可のメリットがフルに活きます。
「許可を取ったのに、結局500万以下の下請け仕事しかしていない」というパターンもよくあるので、
取得前に“どう仕事を変えていくか”のプランを持っておくことが重要です。
5.こんな一人親方は建設業許可を検討したほうがいい
メリット・デメリットを踏まえて、
ネミネミ基準で「許可取得を前向きに検討していい一人親方像」をざっくり挙げると……
500万円前後の工事の話がすでに出ている、または近い将来ほぼ確実に増える
元請けやハウスメーカーから「許可を取ってほしい」と要望が来ている
今後、法人化や従業員採用をして事業を広げていくつもりがある
帳簿付けや社会保険など、「ちゃんとした事業者」へのステップアップを受け入れられる
許可取得コスト(20〜30万円前後)を数年で回収できる見込みがある
逆に、
今後も小さな工事だけで十分
元請けからも「許可はなくて大丈夫」と言われている
今は資金的に厳しく、500万円要件も遠い
という一人親方なら、今すぐ無理に許可を取る必要はない場合も多いです。
6.一人親方が建設業許可を目指すときのステップ
最後に、実際に動くときの流れを簡単に。
現状ヒアリング・要件チェック
経管・専任技術者・500万円要件をクリアできるか
将来のビジョンも含めて整理
許可を取るかどうかの“損益分岐点”をざっくり計算
取得+維持コスト
取った場合に見込める売上アップ
取得する場合、最適なタイミングとスキームを決める
個人のまま取るか、法人化と同時に取るか
資金をどう積むか(貯蓄・借入・家族からの貸付など)
書類準備〜申請
自力でやるか、行政書士に丸投げするかを決める
まとめ:「一人親方にとっての建設業許可」は“名刺の格上げ+将来への投資”
一人親方が建設業許可を取ることは、
今すぐに売上を何倍にもしてくれる魔法ではないけれど
仕事の選択肢を増やし、信用力を上げ、将来のステップアップを後押しする“投資”
という位置づけに近いです。
「今の仕事の単価・ボリューム」
「今後5年間の事業計画」
「自分がどんな働き方をしたいか」
を一度じっくり整理したうえで、
メリットがデメリットを上回るかどうかを冷静に判断してみてください。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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