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建設業許可の審査は赤字決算でも通る!知っておくべき財務要件と対策

建設業許可

公開日:2026/2/21

更新日:2026/2/21

「赤字決算になってしまったが、建設業許可の新規取得や更新はできるのだろうか」と不安を抱えていませんか。結論から言うと、赤字決算や債務超過であっても、それ自体が直接の不許可理由になることはありません。本記事では、一般建設業と特定建設業それぞれで求められる財産的基礎要件の違いや、自己資本が500万円未満の場合の資金調達能力の証明方法など、具体的な対策を分かりやすく解説します。この記事を読むことで、自社が許可要件をクリアするための具体的な手順や、経営事項審査への影響といった注意点が網羅的に分かります。

1. 建設業許可は赤字決算でも取得や更新ができるのか

建設業許可の新規取得や更新を検討している事業者にとって、直近の決算が赤字であることは大きな不安要素の一つです。「赤字だと経営状態が悪いと判断され、許可が下りないのではないか」と悩む経営者は少なくありません。しかし結論から言えば、赤字決算であること自体が、建設業許可の取得や更新を直ちに妨げる直接的な不許可理由にはなりません

建設業許可制度において重視されるのは、単年度の損益ではなく、事業を継続して遂行するための総合的な資金力や財務基盤です。そのため、赤字決算であっても要件を正しく理解し、適切な対応をとることで、許可を取得・維持することは十分に可能です。

1.1 赤字決算自体が直接の不許可理由にはならない

建設業法において、許可を受けるための要件の一つに「財産的基礎または金銭的信用を有していること」が定められています。これは、工事を請け負うにあたって資材の購入や作業員への支払いなど、適切な施工を行うための最低限の資金力があるかを確認するためのものです。

損益計算書上で当期純損失(赤字)を計上していたとしても、それはあくまでその事業年度の収支の結果に過ぎません。審査行政庁が確認するのは、貸借対照表上の自己資本の額や、金融機関からの資金調達能力といった総合的な財務状況が要件を満たしているかどうかです。したがって、過去の利益の蓄積である繰越利益剰余金が十分にあり、自己資本が一定額を上回っていれば、当期が赤字であっても財産的基礎要件をクリアすることができます。

ただし、赤字が複数年連続して累積し、負債総額が資産総額を上回る「債務超過」の状態に陥っている場合は注意が必要です。債務超過になると自己資本がマイナスとなるため、資金調達能力を別の客観的な方法で証明しなければならず、許可取得のハードルは高くなります。

1.2 一般建設業と特定建設業で異なる財務要件の厳しさ

建設業許可は、下請に出す工事の規模などによって「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2つの区分に分かれています。赤字決算が許可審査に与える影響を考える上で最も重要なのは、一般建設業と特定建設業とで、求められる財務要件(財産的基礎要件)の厳しさが全く異なるという点です。

特定建設業許可は、大規模な工事を請け負い、多くの下請業者を束ねる元請業者を対象としています。万が一元請業者が倒産した場合、連鎖倒産によって下請業者が多大な損害を被るのを防ぐため、特定建設業には非常に厳格な財務基準が設けられています。

許可区分

財務要件の厳しさ

赤字決算・債務超過時の影響

一般建設業許可

比較的緩やか

赤字や債務超過であっても、一定の資金調達能力を証明できれば新規取得や更新が可能。

特定建設業許可

非常に厳しい

複数の厳しい財務指標をすべて満たす必要があり、赤字や債務超過は致命的な不許可理由になり得る。

上記の表からもわかるように、一般建設業許可であれば、仮に赤字決算や債務超過であっても、残高証明書などを用いて資金力を証明することで比較的柔軟に対応できるケースが多くなっています。一方で、特定建設業許可においては、赤字決算が直接的に要件未達を引き起こすリスクが高く、より慎重な財務対策が求められます。

このように、自社が取得・更新しようとしている許可区分によって、赤字決算に対する考え方や取るべき対策は大きく変わってきます。

2. 一般建設業許可における赤字決算時の財務要件と対策

一般建設業許可を取得・更新する際、赤字決算であっても一定の要件を満たせば問題なく手続きを進めることが可能です。ここでは、一般建設業許可における具体的な財産的基礎要件と、赤字決算によって自己資本が不足した場合の対策について詳しく解説します。

2.1 一般建設業許可の財産的基礎要件とは

一般建設業許可を受けるためには、請負契約を履行するに足る財産的基礎または金銭的信用を有していることが求められます。具体的には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

要件の区分

具体的な条件

自己資本の額

直前の決算において、自己資本の額が500万円以上あること

資金調達能力

500万円以上の資金を調達する能力を有すること

許可の更新(既存業者)

直前5年間許可を受けて継続して営業した実績があること

ここでいう「自己資本」とは、法人の場合は貸借対照表の「純資産の部」の合計額を指し、個人の場合は期首資本金、事業主借、事業主利益の合計から事業主貸を差し引いた額を指します。赤字決算が続いて純資産が減少しても、最終的な自己資本額が500万円以上であれば、財産的基礎要件はクリアできるのです。

また、一般建設業許可の「更新」の場合は、過去5年間継続して営業した実績があれば財産的基礎要件を満たしているとみなされるため、更新時の決算が赤字であっても、自己資本や資金調達能力を改めて証明する必要はありません。ただし、新規申請や業種追加の際には厳密な審査が行われます。

2.2 自己資本が500万円未満の場合の対策

赤字決算や債務超過などの理由により、直前決算での自己資本が500万円を下回ってしまった場合でも、建設業許可の取得を諦める必要はありません。自己資本が不足している場合には、以下のような対策を講じることで要件を満たすことが可能です。

2.2.1 増資を行って自己資本を増やす

法人の場合、最も確実な対策の一つが「増資」です。申請日までに新たな株式を発行するなどして資本金を増やし、自己資本を500万円以上に回復させることで要件を満たすことができます。増資を行った場合は、法務局での資本金変更の登記手続きを完了させ、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を提出する必要があります。

2.2.2 次期決算まで待って黒字化を目指す

もし申請を急いでいないのであれば、次期の決算で利益を出し、自己資本を500万円以上に回復させるという方法もあります。経営改善を図り、本業での利益を積み上げることで純資産を増やすという、最も根本的で健全な対策です。

2.3 500万円以上の資金調達能力を証明する方法

増資や次期決算を待つことが難しい場合でも、もう一つの要件である「500万円以上の資金調達能力」を証明できれば、一般建設業許可を取得することができます。資金調達能力を証明するためには、主に金融機関が発行する書類を活用します。

2.3.1 預金残高証明書を取得する

最も一般的な証明方法は、金融機関から「預金残高証明書」を取得することです。申請者名義の銀行口座に500万円以上の預金残高があることを証明できれば、資金調達能力があるとみなされます。複数の口座がある場合は、合算して500万円以上になれば問題ありませんが、同日付で発行された残高証明書である必要があります。

なお、残高証明書には有効期限が設けられており、一般的には申請日から遡って1ヶ月以内(自治体によっては2週間以内や14日以内など規定が異なります)に発行されたものである必要があります。そのため、申請のスケジュールに合わせてタイミングよく取得することが重要です。

2.3.2 融資証明書を取得する

預金残高が500万円に満たない場合でも、金融機関から500万円以上の融資を受けられることを証明する「融資証明書」を取得できれば、資金調達能力の証明として認められます。ただし、融資証明書を発行してもらうためには金融機関の厳しい審査を通過する必要があるため、赤字決算の状況下ではハードルが高くなる傾向にあります。

このように、一般建設業許可においては、赤字決算によって自己資本が500万円を割ってしまったとしても、預金残高証明書などを用いて資金調達能力を証明することで、十分に許可を取得することが可能です。自社の財務状況を正確に把握し、要件を満たすための最適な対策を選択することが重要となります。

3. 特定建設業許可における赤字決算時の財務要件と対策

3.1 特定建設業許可の厳しい財産的基礎要件とは

一般建設業許可と比較して、特定建設業許可では下請業者を保護し、大規模な工事を円滑に遂行する観点から、非常に厳しい財産的基礎要件が定められています。特定建設業許可を新規取得、または更新する際には、直前の決算期において以下のすべての要件を満たしている必要があります。

要件の項目

具体的な基準

欠損の額

欠損の額が資本金の20%を超えないこと

流動比率

流動比率が75%以上であること

資本金および自己資本

資本金が2,000万円以上であり、かつ、自己資本が4,000万円以上であること

ここで注意すべき点は、特定建設業許可の財産的基礎要件は、これら3つの基準をすべて同時にクリアしなければならないということです。一つでも満たしていない項目がある場合、特定建設業許可を取得・更新することはできません。

3.2 赤字決算や債務超過が及ぼす影響

単年度の赤字決算だけであれば、直ちに特定建設業許可が取り消されたり、更新ができなくなったりするわけではありません。しかし、赤字が連続して累積していくと、財務諸表の各数値が悪化し、財産的基礎要件に抵触するリスクが極めて高まります。

3.2.1 欠損の額への影響

赤字が重なり利益剰余金がマイナスになると、そのマイナス分が法定準備金等を上回った場合、「欠損の額」として計上されます。この欠損の額が資本金の20%を超えてしまうと、特定建設業許可の要件を満たさなくなります。

3.2.2 自己資本と流動比率への影響

赤字決算は自己資本の減少に直結します。自己資本が4,000万円を下回った場合や、負債が資産を上回る債務超過(自己資本がマイナスの状態)に陥った場合は、特定建設業許可の要件を明確に欠くことになります。また、資金繰りの悪化によって短期借入金や買掛金などの流動負債が増加すると、流動比率(流動資産÷流動負債×100)が75%を下回る大きな原因となります。

3.3 特定建設業許可の更新時に赤字決算だった場合の救済措置

特定建設業許可の更新申請を行う際、直前の決算で財産的基礎要件を満たしていない場合、そのままでは更新が認められません。一般建設業許可のような「500万円以上の資金調達能力を証明する」といった特例措置もないため、状況に応じて抜本的な対策や手続きの変更を検討する必要があります。

3.3.1 決算日を迎える前の財務体質の改善

更新時期が近づいており、要件を満たさない恐れがある場合は、決算日を迎える前に対策を講じることが最も重要です。増資を行って資本金や自己資本を要件額以上に引き上げる、あるいは経営者からの役員借入金を資本金に振り替える(DES:デット・エクイティ・スワップ)などの手法により、財務諸表を改善することが有効な対策となります。また、短期借入金を長期借入金に借り換えることで、流動負債を減らし流動比率を75%以上に改善することも検討すべきです。

3.3.2 一般建設業許可への切り替え(般特新規申請)

すでに決算日を過ぎてしまっており、どうしても特定建設業許可の財産的基礎要件を満たせない場合の最終的な対策として、一般建設業許可への切り替えがあります。特定建設業許可の更新を諦め、要件が比較的緩やかな一般建設業許可を新たに取得する「般特新規」という申請手続きを行うことで、建設業の営業自体は適法に継続することが可能です。ただし、この場合は発注者から直接請け負った1件の工事につき、下請代金の総額が建築一式工事で7,300万円以上、その他の工事で4,500万円以上となる下請契約を締結できなくなるため、今後の事業計画や受注体制を大きく見直す必要があります。

4. 赤字決算で建設業許可を申請する際の注意点

建設業許可の申請や更新において、赤字決算自体が直ちに不許可の理由になるわけではありません。しかし、赤字決算の状態で手続きを進める際には、平時の黒字決算時とは異なる慎重な対応が求められます。ここでは、赤字決算時に建設業許可を申請する上で特に気をつけるべきポイントを解説します。

4.1 財務諸表の正確な作成と提出

建設業許可の申請や毎事業年度終了後に提出する決算変更届(決算報告)では、税務署へ申告した決算書をそのまま提出するのではなく、建設業法に定められた様式に従って財務諸表を作成し直す必要があります。

4.1.1 建設業法に準拠した財務諸表の作成

税務会計に基づく決算書から建設業会計への組み替え作業は、専門的な知識を要します。赤字決算の場合、少しでも見栄えを良くしようと独自の解釈で勘定科目を操作してしまうと、審査窓口で不備を指摘される原因となります。赤字決算であっても、事実をありのままに記載した正確な財務諸表を提出することが大前提となります。不安がある場合は、建設業許可に精通した行政書士や税理士などの専門家に作成を依頼することをおすすめします。

4.1.2 粉飾決算は絶対に避ける

赤字決算による財産的基礎要件への悪影響を恐れるあまり、売上を過大に計上したり、経費を意図的に除外したりするような粉飾決算は絶対に行ってはいけません。虚偽の記載が発覚した場合、建設業許可の取得や更新ができないだけでなく、最悪の場合は許可の取り消しや重い罰則の対象となります。行政機関の審査は厳格であり、不自然な数字の動きは必ず疑念を持たれます。赤字という事実を隠すのではなく、合法的な資金調達や次期以降の経営改善計画で対応することが正しいアプローチです。

4.2 経営事項審査への影響を考慮する

公共工事の元請受注を目指す建設業者にとって、経営事項審査(経審)を受けることは必須です。建設業許可の維持自体は赤字決算でも可能ですが、経営事項審査においては赤字決算が審査の点数に直接的な悪影響を及ぼします。

4.2.1 公共工事の入札参加資格と経営状況分析(Y点)への影響

経営事項審査の項目の一つである「経営状況分析(Y点)」は、企業の財務の健全性を客観的な数値で評価するものです。赤字決算が続いている場合や債務超過に陥っている場合、このY点のスコアが著しく低下します。総合評定値(P点)が下がると、各自治体や官公庁が定める客観点数が低く見積もられ、結果として公共工事の入札参加資格のランクが下がってしまうリスクがあります。

以下の表は、赤字決算が経営事項審査および入札参加資格に与える主な影響を整理したものです。

審査項目・影響範囲

赤字決算による主な影響と注意点

経営状況分析(Y点)

純支払利息比率や負債回転期間、売上高経常利益率などの指標が悪化し、Y点のスコアが大幅に低下する要因となります。

経営規模等評価(X点・Z点・W点)

自己資本額や営業利益額の減少により、企業の規模や体力を示す評価項目においても減点され、総合評定値(P点)全体が下がります。

公共工事の入札参加資格

総合評定値の低下により、希望する発注機関の格付け(ランク)が下がり、大規模な公共工事の入札に参加できなくなる恐れがあります。

4.2.2 経審を見据えた経営改善の必要性

公共工事を事業の柱としている企業の場合、単に建設業許可の要件をクリアするだけでなく、次年度以降の黒字化に向けた抜本的な経営改善が不可欠です。赤字の要因を分析し、経費の削減や利益率の高い民間工事の受注強化など、経営状況分析の数値を回復させるための具体的な対策を講じる必要があります。また、一時的な赤字であれば、減価償却費の計上方法の見直しや、不要な資産の売却による特別利益の計上など、合法的な範囲での財務体質の改善策を税理士と協議することも有効な手段となります。

5. まとめ

建設業許可の審査において、赤字決算であること自体が直接の不許可理由になるわけではありません。一般建設業許可では、自己資本が500万円未満であっても、金融機関の預金残高証明書などで500万円以上の資金調達能力を証明できれば取得や更新が可能です。

一方、特定建設業許可は財務要件が厳しく、債務超過などが審査に大きく影響するため、事前の対策が不可欠です。また、赤字決算は公共工事の入札に関わる経営事項審査(経審)の評点低下につながるため注意が必要です。財務諸表を正確に作成し、自社の状況に合った適切な対策を講じることで、赤字決算でも許可を維持・取得することができます。

コラムを書いた人

篠原 博之

行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表

個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属

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