【2026年】東京都「ステーブルコイン社会実装促進事業補助金」とは?最大4,000万円の対象・申請方法を行政書士が解説
補助金
公開日:2026/4/19
更新日:2026/4/19
東京都は令和8年4月、ステーブルコイン(SC)のユースケースを創出する事業者を対象に、最大4,000万円(補助率2/3以内)の補助金募集を開始しました。募集期間は令和8年4月17日〜令和8年6月30日。本記事では、交付要綱・募集要領をもとに、補助対象事業・補助対象経費・審査のポイント・実務上の注意点を、行政書士の視点から解説します。
- 1. この補助金の概要と目的
- 2. 補助対象事業の要件【要確認】
- 重要:「SC発行事業」は対象外
- 3. 補助対象経費の3つの類型
- ① 外部基盤利用経費
- ② 専門家への相談・監査等に伴い発生する経費
- ③ システム開発経費
- 4. 補助対象事業者の要件
- 5. 審査基準・採択のポイント(5つの観点)
- 6. 申請・実績報告で注意すべきこと
- ① 交付決定前の契約・支払は絶対にNG
- ② 実績報告に必要な書類を最初から整理する
- ③ 関係書類は5年間保存が義務
- ④ 補助金の返還リスクを理解しておく
- 7. 申請から補助金交付までの流れ
- 8. 行政書士による支援が活きる場面
- 費用面でも専門家活用を検討しやすい制度
- 9. まとめ:募集締切は令和8年6月30日
1. この補助金の概要と目的
本補助金の正式名称は「ステーブルコイン社会実装促進事業補助金」。東京都産業労働局が所管し、令和8年4月15日付で交付要綱が制定されました。
目的は、新しい決済インフラとして期待されるSCの健全な市場形成の促進です。都民や都内事業者が抱える社会課題の解決・決済送金の利便性向上を図るとともに、日本円建てSCの普及を通じて「円ベースのデジタル経済圏の構築」と「日本円のプレゼンス向上」に資するユースケースを創出する事業者を支援します。
単なる「IT導入補助」ではなく、日本円建てSCだからこそ実現できる付加価値を、東京から社会実装するための制度です。
補助上限額 | 4,000万円(1件あたり) |
|---|---|
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
募集期間 | 令和8年4月17日〜令和8年6月30日 |
補助対象期間 | 交付決定日〜令和9年3月31日 |
申請窓口 | 東京都産業労働局 国際金融都市推進課 |
電子申請 | jGrantsによる電子申請も可能 |
2. 補助対象事業の要件【要確認】
補助対象となるのは、以下の要件をすべて満たす事業です。
資金決済に関する法律その他の関係法令を遵守していること
実発行された国内の日本円建てSCを活用してユースケースを創出する取組であること
実装または検証を行う地域に都内を含むこと
原則として令和9年3月31日までに実装または検証が完了すること
重要:「SC発行事業」は対象外
国内でSCを発行する事業そのものは補助対象になりません。ただし、第三者にSC発行を委託し、そのSCを活用してユースケースを創出する事業は対象に含まれます。この違いは見落とされやすいため、事業スキームの整理段階でしっかり確認が必要です。
3. 補助対象経費の3つの類型
補助対象経費は以下の3つに分類されます(消費税・地方消費税は対象外)。
① 外部基盤利用経費
SCの発行を外部の基盤提供事業者に委託する際に要する費用です。プラットフォーム利用料・ウォレット利用料・ブロックチェーン利用料・ノード運用費などが含まれます。なお、SCの裏付資産として拠出される資金は補助対象外となります。
② 専門家への相談・監査等に伴い発生する経費
弁護士・行政書士・税理士等による法務、許認可、税務等に関する助言・コンサルティング費用、および情報セキュリティ等に関する監査・診断・評価・助言費用が対象です。
実務上のポイント:ステーブルコインの社会実装では、資金決済法への対応・契約設計・KYC/AML体制の整備など、制度面の検討が不可欠です。専門家費用が補助対象に含まれているのは、この補助金の大きな特長といえます。
③ システム開発経費
ユースケース創出に必要なシステム開発を外部事業者に委託する費用です。仕様書等において実施内容を具体的に指示できるものに限り、かつSC利用者に高い付加価値を創出できるシステムであることが条件です。
【システム開発経費の注意事項】
1件あたり税抜100万円以上の経費は、原則2社以上の見積書(項目ごとの内訳あり)が必要
第三者への再委託・再外注した経費は対象外
親会社・子会社・グループ企業等の関連会社への支払は対象外
技術開発要素を伴わないデザイン・翻訳等の経費は対象外
人材派遣に係る経費は対象外
成果物の所有権(ソフトウェアは著作権)が申請者に帰属しない場合は対象外
4. 補助対象事業者の要件
以下の要件をすべて満たす必要があります。
都内に登記簿上の本店または支店があること
必要な免許・許可・登録等を完了していること
同一年度内に国・他自治体からの委託や助成を受けていないこと
都の広報活動に協力できること
税金の滞納がないこと
反社会的勢力との関与がないこと
会社更生・民事再生の申立がなされていないこと
都からの指名停止措置を受けていないこと
なお、採択は補助対象事業者1社につき1件までです。実質的に同一の補助対象事業者等と都が認める場合は、複数回の採択はできません。
5. 審査基準・採択のポイント(5つの観点)
審査は面接審査で行われ、応募者多数の場合は事前に書面審査で絞り込まれます。面接審査ではA4用紙3枚以内の説明資料(パワーポイント等)の用意が必要です(原則オンライン形式)。
ア 社会的意義 | 日本円建てSCの普及への貢献度、都民・都内事業者の社会課題(決済・送金の非効率性、コスト負担等)の解決、利便性向上への寄与 |
|---|---|
イ 先進性 | SCの特性(価格安定性・即時性・プログラマビリティ等)を活かした新たなユースケースであるか。単なる既存サービスの代替にとどまらず、SCならではの付加価値が創出されているか |
ウ 実現性 | 関係法令を遵守した事業スキームか。SC発行体との調整状況が具体的か。令和9年3月31日までに実装・検証が完了する現実的な計画か |
エ 将来性・普及可能性 | 検証後の本格展開や事業拡大の構想が具体的か。利用者の裾野をどこまで広げられるか。SC市場全体の成長への寄与可能性 |
オ 安全性・リスク管理 | 法務・技術・運営等のリスクへの対応策。マネーロンダリング等の不正利用防止の仕組み。利用者保護や事故・不正発生時の対応方針 |
6. 申請・実績報告で注意すべきこと
① 交付決定前の契約・支払は絶対にNG
補助対象となるのは、交付決定日以降に契約・利用・サービス提供・支払がすべて完了した費用に限られます。交付決定前に動いてしまうと、全額が補助対象外になりかねません。これは助成金全般に共通する最重要ルールです。
② 実績報告に必要な書類を最初から整理する
実績報告では、見積書・契約書・請求書・振込受付控え(金融機関発行・振込先明記のもの)・預金通帳・元帳・写真(事業の成果が分かるもの)等が必要です。都は必要に応じて完了検査(現場確認・証拠書類の原本照合等)を実施します。
採択後の証拠固めを最初から意識しないと、事業は完了したのに実績報告で詰まる、というケースが起こりやすい補助金です。
③ 関係書類は5年間保存が義務
補助対象事業に係る会計帳簿および証拠書類は、事業完了日の属する会計年度終了後5年間の保存が義務付けられています。
④ 補助金の返還リスクを理解しておく
不正な手段による受給・目的外使用・ユースケース創出に至らなかった場合等は、交付決定が取り消され補助金の返還が求められます。返還命令の場合は年10.95%の違約加算金も加算されます。事業遂行の見通しが立たなくなった場合は、速やかに都へ報告することが重要です。
7. 申請から補助金交付までの流れ
① 交付申請 | 必要書類を令和8年6月30日までに提出(郵便・持込・jGrants電子申請) |
|---|---|
② 補助対象事業の選定 | 書面審査(必要な場合)→ 面接審査(A4×3枚以内の説明資料を準備) |
③ 交付決定 | 審査通過後、交付決定通知書が送付される |
④ 補助対象事業の実施 | 交付決定日以降に契約・発注・支払を開始 |
⑤ 実績報告書の提出 | 事業終了後または令和9年3月31日のいずれか早い日までに提出 |
⑥ 完了検査 | 必要に応じ現場確認・証拠書類の原本照合等 |
⑦ 交付額の確定・補助金交付 | 確定通知後、請求書を提出→振込 |
8. 行政書士による支援が活きる場面
この補助金は、「申請書を作るだけ」では完結しません。事業スキームの整理・法令適合性の確認・補助対象経費の切り分け・証拠書類管理・実績報告の設計まで、一貫したサポートが採択後の実務難易度を大きく左右します。
申請前の事業スキーム整理・法令適合性の確認
補助対象経費・対象外経費の切り分けアドバイス
申請書類・面接審査用説明資料の作成支援
外部専門家・開発事業者との役割整理
実績報告を見据えた証憑管理の設計
完了検査対応を見据えた事前チェック
費用面でも専門家活用を検討しやすい制度
本補助金では行政書士等への相談・コンサルティング費用も補助対象経費に含まれます。そのため、採択後の実績報告・完了検査対応を見据えた伴走支援も、費用対効果を考えながら導入しやすい制度設計になっています。
ただし、交付決定後の契約・実施・支払であること、契約内容や支払事実を確認できること、都が補助対象経費として認めることが前提です。この点は事前に設計しておくことが大切です。
9. まとめ:募集締切は令和8年6月30日
日本円建てステーブルコインの社会実装は、まだ広がっていく段階にあります。だからこそ今、先行事例となるユースケースを形にできる事業者にとって、この補助金は大きな追い風です。
申請書類の準備・事業スキームの整理には一定の時間が必要です。「自社の構想が対象になるか確認したい」「開発費と専門家費用のどこまでが補助対象になりそうか」「事業スキームをどう整理すれば採択可能性が高まるか」といった段階からご相談いただけます。
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コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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