「良い物件が見つかったので、急いで申し込みをして契約金を振り込んだ」 「不動産屋さんが『たぶん飲食店できるよ』と言っていたから契約した」風俗営業(キャバクラ、ホストクラブ、麻雀店など)の開業準備において、最も恐ろしい失敗事例をご存知でしょうか?それは、「数百万の初期費用を払って物件を契約したのに、後から『場所のルール』で許可が取れないことが判明し、営業できずに撤退する」というケースです。風営法の許可を取得するためには、「人(欠格事由)」「構造(お店の設備)」そして「場所(立地)」という3つの要件をすべて満たす必要があります。中でも「場所」の要件は、たとえ1メートルでも基準を満たしていなければ、いかなる交渉の余地もなく100%不許可となります。本記事では、開業予定のオーナー様が絶対に知っておくべき「用途地域」と「保全対象施設(距離制限)」の複雑なルールについて、行政書士が詳しく解説します。不動産契約のハンコを押す前に、必ずご確認ください。そもそも「風俗営業」ができるエリアは決まっている(用途地域)日本の土地は、都市計画法によって「ここは住宅地」「ここは商業地」といった使い道(用途地域)が決められています。風俗営業(1号〜5号営業)は、どこでも自由に開業できるわけではなく、原則として以下の地域でしか許可が下りません。風俗営業が可能な主な用途地域商業地域近隣商業地域準工業地域(※条例による)工業地域(※条例による)逆に言えば、「住居地域(第一種・第二種住居地域など)」には、どれだけ良い物件があっても、原則として風俗営業のお店を作ることはできません。要注意!「飲食店ならOK」の罠不動産屋の図面に「飲食店可」と書いてあっても安心はできません。一般的な居酒屋やバー(深夜酒類提供飲食店)は住居地域でも開業できる場合がありますが、キャバクラや麻雀店などの「風俗営業」はNGというケースが多々あるからです。 必ず自治体の都市計画図を確認し、その場所の「色分け(用途地域)」を特定する必要があります。最大の難関「保全対象施設」と「距離制限」用途地域をクリアしても、次に立ちはだかるのが「保全対象施設(ほぜんたいしょうしせつ)」との距離制限です。風営法では、善良な風俗環境を保つため、「特定の施設(学校や病院など)の周囲〇〇メートル以内では営業してはいけない」というルールがあります。これを距離制限と呼びます。代表的な保全対象施設許可を取ろうとする物件の近くに、以下の施設はありませんか?学校(小学校、中学校、高校、大学、高等専門学校など)図書館児童福祉施設(認可保育園、認定こども園、児童公園など)病院(※入院施設のあるもの)診療所(※入院施設のあるもの)距離の基準は地域によって異なる「何メートル離れていればいいのか?」は、各都道府県の条例や、その場所が「商業地域」か「それ以外」かによって異なります。【一般的な例(東京都などの場合)】商業地域の場合: 保全対象施設から 約20メートル〜50メートル 以上離れていることそれ以外の地域(近隣商業など): 保全対象施設から 約100メートル〜110メートル 以上離れていること※上記はあくまで目安です。自治体によって数値は細かく異なります。ここが怖い!プロでも見落としがちな「隠れ施設」「Googleマップで見たけど、近くに学校も病院もなかったから大丈夫」 そう判断するのは非常に危険です。地図には載っていない、あるいは外見ではわからない「隠れ保全対象施設」が存在するからです。1. 入院ベッドのある「診療所」大きな総合病院だけでなく、街の小さなクリニック(診療所)であっても、「入院用のベッド(病床)」があれば保全対象施設となります。外観は普通のビルの一室でも、実は入院施設があるケースも少なくありません。2. 小規模な「認可保育園」近年増えているビルイン型(テナント型)の保育園などは、外から看板が見えにくいことがあります。「認可」を受けていれば対象となりますが、「無認可」であれば対象外となるなど、判断には専門的な調査が必要です。3. 「建設予定」の施設現在は更地であっても、「将来そこに学校や保育園ができることが決定している」場合、保全対象施設として扱われることがあります。これは役所で開発計画を調べない限りわかりません。自己防衛策「停止条件付契約」のすすめここまでお読みいただき、「リスクが高すぎる」と感じた方もいらっしゃると思います。そこで、物件契約をする際にオーナー様ができる最大の自己防衛策をご紹介します。それは、不動産賃貸借契約の特約に「停止条件(ていしじょうけん)」を盛り込むことです。【特約の例】 「本契約は、借主が予定している風俗営業許可が取得できた場合に効力を生じるものとする。万が一、場所的要件などが理由で許可が下りなかった場合は、本契約は白紙撤回し、貸主は受領済みの手付金・敷金等を全額返還するものとする。」不動産会社や貸主との交渉が必要ですが、この特約があれば、万が一許可が取れなかった場合に金銭的なダメージを最小限に抑えることができます。わずか数メートルの差で許可が出ないことも距離制限の測定は、「お店の出入り口」から「学校等の敷地」までの「直線距離」で測られることが一般的です(※自治体により「道のり」の場合もあり)。私たち行政書士が調査を行う際は、メジャーやレーザー距離計を用い、さらに詳細な地図データと照らし合わせてミリ単位のシビアな判断を行います。「ギリギリ大丈夫だろう」という自己判断は、ビジネスの命取りになります。物件の契約書にサインをする前に、ぜひ一度、風営法専門の行政書士にご相談ください。 「その物件で本当に許可が取れるのか」を、プロの目で確実に調査いたします。記事のまとめ用途地域: 「商業地域」や「近隣商業地域」以外では原則開業不可。保全対象施設: 学校、病院(有床)、図書館、認可保育園などが対象。距離制限: 用途地域により数十〜百メートル以上の距離が必要。隠れリスク: ビルの中の保育園や、建設予定地も対象になる。対策: 不動産契約前に必ず専門調査を入れ、「停止条件付契約」を検討する。