フリーランス新法って何?
契約書
公開日:2024/10/12
更新日:2025/12/1
2024年11月からフリーランス新法がスタートします。
働き方が多様化する中で、フリーランスとして働く人も増えていまが、フリーランスは企業に比べて立場が弱く、不当な扱いを受けることも少なくありません。そこで、フリーランスを保護するために作られたのが「フリーランス新法」です。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。
フリーランスの定義について改めて確認し、この法律で何が保護されるようになったのかを確認しましょう。
フリーランスとは
フリーランスは英語で「freelance」と書きます。その語源は中世ヨーロッパにさかのぼります。
自由を意味する「free」と槍を意味する「Lance」を組み合わせた言葉といわれています。
中世ヨーロッパでは騎士は貴族に忠誠を誓っていましたが、貴族に属さない騎士もいました。そういった、君主と直接報酬のやりとりをする傭兵たちを「フリーランサー」と呼んだことが語源と言われています。
このように特定の組織と雇用関係を結ばず、独立して仕事を請け負う人のことをフリーランスと呼んでいます。
フリーランス新法では正式にはフリーランスを「特定受託事業者」といい、次のように定義しています。
特定受託事業者
業務委託の相手方である事業者であって、次の1、2のいずれかに該当するもの
個人であって、従業員を使用しない者
法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの
ただし、第14条では、「特定受託業務従事者」(特定受託事業者である1の個人/特定受託事業者である2の法人の代表者)と定義
会社員として働いている方が、副業で事業を行っている場合も副業での業務委託の部分に関してはフリーランスに該当します。
また、従業員には同居親族は含みません。
形式的に業務委託契約を締結していても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係法令が適用されます。
対象となる取引の内容
フリーランス新法の対象となる「業務委託」とは、発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となります。業種・業界の限定もありません。
また、発注事業者(フリーランスも含まれます)との取引が対象となります。消費者を相手に取引をする場合は対象となりません。
フリーランス新法が制定された背景
フリーランスと発注事業者の間の取引の適正化が法律制定の目的とされています。
法人同士の取引よりもフリーランスは弱い立場であることが多く、取引上不利益を被る機会が少なくありませんでした。また、雇用関係にはないため労働基準法の対象とはならず、フリーランスの取引を適正に保護する法律が必要とされていました。
義務と禁止行為
フリーランス新法には以下の義務と禁止行為が定められています。
書面などによる取引条件の明示
フリーランスに対して業務委託する場合、口頭での明示はNGになります。
書面またはメールやSNSのメッセージ等、記録の残る方法で取引条件を明示する義務があります。
取引条件として明示する事項は9つです。
給付の内容
報酬の額
支払期日
業務委託事業者・フリーランスの名称
業務委託をした日
給付を受領する日/役務の提供を受ける日
給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
(検査をする場合)検査完了日
(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項
報酬支払期日の設定・期日内の支払
報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日に支払う必要があります。
ただし、元委託者から受けた業務を発注事業者がフリーランスに再委託をした場合、条件を満たせば、元委託業務の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることが出来ます。【再委託の例外】
7つの禁止行為
フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、7つの行為が禁止されています。
受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
返品(受け取った物品を返品する事)
買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)
募集情報の的確表示
広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たれなければなりません。
育児介護等と業務の両立に対する配慮
フリーランスに対して6ヶ月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。また、6ヶ月未満の業務を委託している場合も配慮するよう努めなければなりません。
ハラスメント対策に関する体制整備
ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、「従業員に対してハラスメント防止のための研修を行う」、「ハラスメントに関する相談の担当者や相談対応制度を設けたり、外部の機関に相談への対応を委託する」、「ハラスメントが発生した場合には、迅速かつ正確に事実関係を把握する」などの措置を講じなければいけません。
中途解除等の事前予告・理由開示
フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合、少なくとも30日前までに、書面、ファクシミリ、電子メール等による方法でその旨を予告しなければなりません。
違反した場合
発注事業者は違反した場合行政の調査を受けることになり、指導・助言や、必要な措置を取ることを勧告されます。
勧告に従わない場合には、命令・企業名公表、さらに命令に従わない場合には罰金が科されます。
まとめ
フリーランス新法は、フリーランスを取り巻く環境を改善するための第一歩と言えるでしょう。まだ、法律の実効性などしっかり見守っていく必要があります。
フリーランスの方も、フリーランスに発注する事業者様も業務委託契約書を見直す良い機会だと思います。
契約書の内容に不安がある方はご相談ください。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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