【行政書士が解説】IT現場の「偽装請負」判断基準と、会社を守る正しい発注ルー
契約書
公開日:2025/12/6
更新日:2025/12/6
「常駐エンジニアにSlackで直接タスクを振っていませんか?」 「始業時間の報告をチャットで求めていませんか?」
もし心当たりがあるなら、そのプロジェクトは「偽装請負」とみなされ、行政指導の対象になるリスクがあります。
IT業界で常態化している、業務委託(請負・準委任)契約における偽装請負問題。「契約書さえ交わしていれば大丈夫」と思っていませんか? 実は、労働局の調査で重視されるのは書類よりも「現場の実態」です。
今回は、現役の行政書士であり、ITコンサルタントとして数々の現場を見てきた私が、IT現場特有の「偽装請負」の境界線と、適法にプロジェクトを進めるためのポイントを解説します。
そもそも「偽装請負」とは?
システム開発や保守の現場では、「準委任契約(SES)」や「請負契約」といった業務委託契約が一般的です。これらは、あくまで「業務の遂行」や「成果物の完成」を約束するものであり、発注側にはエンジニアへの「指揮命令権」がありません。
しかし、実態として発注側の社員が、外部のエンジニアに対して直接指示を出したり、勤怠管理を行ったりしている場合、それは「実質的な労働者派遣」とみなされます。
「契約は業務委託なのに、実態は派遣社員のように扱っている」 これが偽装請負(違法)です。
【セルフチェック】その指示、実は「違法」です(IT現場編)
法律の定義は難解ですが、IT現場の「あるある」に落とし込むと判断しやすくなります。以下のケースは非常に危険です。
1. SlackやTeamsでの「マイクロマネジメント」
「Aさん、このバグ修正を最優先でやって」「次はBの機能を実装して」といった具体的な作業指示をチャットツールで直接行っていませんか? 業務委託の場合、発注できるのは「成果物の要件」や「業務の依頼」までです。作業の進め方や優先順位を細かく指示することは「指揮命令」にあたります。
2. 始業・終業・休憩時間の管理
「朝会には必ず参加すること」「遅刻・早退時は連絡すること」というルールを強制していませんか? 業務委託のエンジニアには、原則として時間の拘束を行えません(セキュリティ上の入退室管理は除く)。
3. チーム体制の混在
発注側の社員と外部エンジニアが混在し、誰が責任者か分からない状態でチームを組んでいませんか? 指揮命令系統を明確にするためには、受注側の「責任者」を通して指示を出す必要があります。
偽装請負とみなされた時の「経営リスク」
もし労働局の調査で「偽装請負」と認定された場合、企業は大きなリスクを背負います。
是正指導と社名公表 行政からの改善命令が出され、悪質な場合は企業名が公表されます。コンプライアンスを重視する大手クライアントとの取引停止に直結します。
労働契約申込みみなし制度 これが経営者にとって最も恐ろしい点です。違法な派遣(偽装請負)を受け入れていた場合、発注側企業がそのエンジニアに対して「直接雇用の申し込み(正社員化など)」をしたとみなされる法律があります。予期せぬ人件費の増加につながります。
行政書士×ITコンサル流:適法にプロジェクトを進める「2つの防波堤」
では、コンプライアンスを守りながら、円滑に開発を進めるにはどうすれば良いのでしょうか。私は「契約書」と「IT運用」の両軸を整えることを推奨しています。
① 実態に即した「契約書」の整備(行政書士の領域)
ネット上の雛形をそのまま使っていませんか? 「請負」なのか「準委任」なのか、何を「成果物」とするのか、検収基準はどうするのか。プロジェクトの実態に合わせて、権利義務関係を明確にした契約書を作成する必要があります。ここが最初の防波堤です。
② ITツールによる「発注・検収フロー」の確立(ITコンサルの領域)
契約書が完璧でも、現場のチャットで指示を出しては意味がありません。 私が推奨しているのは、「サスケWorks」などのノーコードツールを使って、発注と研修の流れをツール上に固定する事です。
曖昧な口頭指示・チャット指示を廃止する。
ツール上で「業務依頼書(発注)」を起票し、受注企業の窓口担当にだけ送る
受注側は、自社内でタスクを割り振り、完了したらツール上で「完了報告(納品)」を行う
一例ですが、こうした運用を徹底し、すべてをツール上に記録しておくことで、
「発注者はあくまで成果物単位で発注・検収している」「具体的な作業指示や勤務管理は受託企業側で行っている」
という実態を示す一つのエビデンスになります。
もちろん、これだけで偽装請負を完全に否定できるわけではありませんが、契約内容や指揮命令ラインのルールと組み合わせることで、リスクを大きく下げることができます。
まとめ:契約と現場の両方を守るために
「ウチの現場運用は大丈夫だろうか?」 「契約書と現場の実態がズレている気がする」
そう感じた経営者様は、一度ご相談ください。 当事務所は、行政書士としての「予防法務(契約書作成)」と、ITコンサルタントとしての「現場運用(ツール導入による証拠作り)」をワンストップで支援できる数少ない事務所です。
社労士や弁護士とも連携しながら、エンジニアも経営者も安心して働ける、クリーンな開発体制の構築をお手伝いします。
※免責事項 当事務所では、契約書の作成・点検および業務プロセスの構築支援を中心に行っております。具体的な労働争議の解決や、社会保険・労働保険の手続き等の独占業務については、提携の社会保険労務士・弁護士と連携して対応いたします。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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