新宿区高田馬場の行政書士事務所

許可・認可・届出は何が違う?事業を始める前に知っておきたい行政手続きの基本 

その他許認可

公開日:2026/6/30

更新日:2026/6/30

許可・認可・届出は似ているようで意味が違う

事業を始めようとすると、「許可が必要です」「認可を受けてください」「届出をしてください」といった言葉を目にすることがあります。

どれも役所に書類を出す手続きのように見えるため、一般の方からすると違いがわかりにくいかもしれません。

しかし、許可、認可、届出は、法律上の意味や手続きの重さが異なります。

特に、事業を始める場面では、この違いを誤解すると、営業開始のタイミングを間違えたり、無許可営業になってしまったりすることがあります。

この記事では、許可・認可・届出の違いを、事業者の方にもわかりやすいように解説します。

まず押さえたい「申請」と「届出」の違い

許可、認可、届出を理解する前に、まず「申請」と「届出」の違いを押さえておくとわかりやすくなります。

行政手続きは、大きく分けると、行政庁に判断してもらう手続きと、行政庁に一定の事実を知らせる手続きがあります。

前者が「申請」、後者が「届出」と考えるとイメージしやすいです。

申請は、行政庁に対して「許可してください」「認可してください」「免許を与えてください」とお願いし、その結果として、行政庁が許可・不許可などの判断をする手続きです。

一方、届出は、行政庁に対して「この事業を始めます」「この事項に変更がありました」と知らせる手続きです。

つまり、許可や認可は、基本的に申請に対する行政庁の判断として行われます。これに対して、届出は、行政庁に一定事項を通知する手続きです。

許可とは

許可とは、もともと法律で禁止されている行為について、一定の要件を満たした場合に、その禁止を解除してもらう手続きです。

わかりやすくいうと、「本来は勝手にやってはいけない事業や行為について、役所の審査を受けて、やってもよい状態にしてもらうこと」です。

許可が必要な事業では、許可を受ける前に営業を開始することはできません。

たとえば、次のようなものが許可の例です。

・建設業許可
・旅館業許可
・古物商許可
・風俗営業許可
・飲食店営業許可

許可が必要な事業では、人的要件、財産的要件、施設・設備の要件、欠格事由の有無などが審査されます。

許可を受ける前に営業してしまうと、無許可営業として行政処分や罰則の対象になることがあります。

そのため、許可が必要な事業では、「書類を出したから営業してよい」のではなく、「許可が下りてから営業できる」と考える必要があります。

認可とは

認可とは、私人同士の法律行為や団体の行為について、行政庁が同意・補充することで、その効力を完成させる手続きと説明されることが多い用語です。

少し難しい表現ですが、簡単にいうと、「当事者だけで決めただけでは足りず、行政庁の認可を受けることで法的な効力が認められるもの」と考えるとわかりやすいです。

たとえば、法人の設立、定款変更、事業計画、料金の設定などについて、法律上「認可」が必要とされる場合があります。

認可は、許可と同じように役所の審査を受ける手続きですが、考え方には違いがあります。

許可は、原則として禁止されている行為について、その禁止を解除するものです。

これに対して、認可は、当事者が行った行為について、行政庁が認めることで、その効力を完成させるものと整理されます。

ただし、実務上は、法律ごとに「認可」という言葉の使われ方が異なることもあります。

そのため、実際の手続きでは、言葉だけで判断するのではなく、根拠となる法律や条例で、何をいつまでに行う必要があるのかを確認することが重要です。

届出とは

届出とは、行政庁に対して、一定の事項を知らせる手続きです。

許可や認可と違い、行政庁に「認めてもらう」ことが中心ではなく、「必要な事項を届け出る」ことが中心です。

たとえば、次のようなものが届出の例です。

・住宅宿泊事業の届出
・深夜酒類提供飲食店営業開始届出
・変更届
・廃業届
・役員変更届
・営業所変更届

届出は、形式上の要件を満たしていれば、行政庁に到達した時点で届出義務を果たしたものとされるのが原則です。

ただし、ここで注意が必要です。

届出だからといって、何でも簡単にできるわけではありません。

届出書の記載事項に不備がある場合、必要書類が添付されていない場合、そもそも法令上の要件を満たしていない場合には、受理されない、補正を求められる、後から行政指導や処分の対象になるといったことがあります。

特に、住宅宿泊事業や深夜酒類提供飲食店営業のような事業系の届出では、建物、用途地域、消防、管理体制、周辺環境など、実質的な確認事項が多くあります。

「届出だから簡単」と考えて進めると、思わぬところで止まってしまうことがあります。

許可・認可・届出の違いを表で整理

許可・認可・届出の違いを簡単に整理すると、次のようになります。

区分

基本的な意味

行政庁の判断

営業開始のタイミング

許可

原則禁止されている行為を、要件を満たす場合に認めるもの

あり

許可後

建設業許可、旅館業許可、古物商許可

認可

当事者の行為について、行政庁が認めることで効力を完成させるもの

あり

認可後または効力発生後

法人設立認可、定款変更認可など

届出

行政庁に一定事項を知らせるもの

原則として諾否の判断ではない

届出後。ただし制度ごとに確認が必要

住宅宿泊事業届出、変更届、廃業届

ざっくりいうと、手続きの重さは、一般的には「届出」よりも「許可・認可」の方が重いと考えられます。

ただし、届出であっても、実務上は事前相談や添付書類の確認が重要になることがあります。

「許認可」という言葉に注意

実務では、「許認可」という言葉がよく使われます。

許認可とは、許可、認可、免許、登録、届出などをまとめて呼ぶ便利な言葉です。

行政書士業務でも、「許認可申請」という表現はよく使われます。

ただし、厳密には、許可、認可、届出はそれぞれ意味が違います。

そのため、「許認可が必要です」と言われた場合には、具体的にどの手続きが必要なのかを確認する必要があります。

たとえば、同じ宿泊関係でも、旅館業は「許可」、住宅宿泊事業は「届出」です。

同じように建物を使って宿泊サービスを行う場合でも、制度が違えば、手続きの内容、審査の有無、営業日数、必要書類、消防・建築の確認事項が変わります。

「許認可」と一括りにせず、具体的な制度名まで確認することが大切です。

「届出ならすぐ営業できる」とは限らない

届出について、特に誤解されやすいのが「届出なら出せばすぐ営業できる」という点です。

たしかに、許可と比べると、届出は行政庁の裁量的な許可判断を受ける手続きではありません。

しかし、事業系の届出では、届出前に確認すべき事項が多くあります。

たとえば、住宅宿泊事業では、建物が住宅に該当するか、年間180日以内の営業か、管理業者への委託が必要か、消防法令への適合が確認されているか、自治体条例による制限がないかなどを確認する必要があります。

深夜酒類提供飲食店営業開始届出でも、用途地域、営業所の構造、客室面積、照明、設備、風俗営業該当性などが問題になります。

つまり、届出は「審査がないから何でも通る手続き」ではありません。

届出であっても、法令上の要件を満たしていなければ、適法に営業を続けることはできません。

「許可が必要か、届出でよいか」は事業内容で変わる

許可が必要なのか、届出でよいのかは、事業の名称だけで決まるわけではありません。

実際に何をするのか、どこで行うのか、どのくらいの規模で行うのか、誰を相手にするのかによって変わります。

たとえば、宿泊サービスを行う場合でも、年間を通じて営業するホテル・旅館であれば旅館業許可が問題になります。一方、住宅を使って年間180日以内で営業する場合には、住宅宿泊事業の届出が問題になります。

中古品を買い取って販売する場合には古物商許可が必要になることがありますが、自分の不用品を単発で売るだけであれば、通常は古物商許可までは問題になりません。

建設工事も、工事の内容や請負金額によって、建設業許可が必要になるかどうかが変わります。

このように、同じように見える事業でも、実態によって必要な手続きは変わります。

手続きを間違えるとどうなるか

必要な許可を受けずに営業した場合、無許可営業として罰則や行政処分の対象になることがあります。

また、許可がないことを理由に、取引先との契約が進まない、融資を受けにくい、補助金や助成金の申請で不利になる、賃貸借契約や保険で問題になるといった影響が出ることもあります。

届出が必要な事業で届出をしていない場合も、行政指導、営業停止、過料、罰則などの対象になることがあります。

さらに、変更届や更新手続きを忘れた場合も注意が必要です。

許可や届出は、取得・提出して終わりではありません。

営業所の移転、役員変更、管理者変更、設備変更、廃業などがあった場合には、一定期間内に変更届や廃業届が必要になることがあります。

事業を続ける中で、手続きの管理をきちんと行うことも重要です。

事業を始める前に確認すべきこと

新しく事業を始める場合は、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。

  1. その事業に許可・認可・届出が必要か

  2. どの行政機関が窓口になるか

  3. 営業開始前に手続きが必要か

  4. 許可が下りるまで営業できない制度か

  5. 施設・設備・人員・資格などの要件があるか

  6. 用途地域や建築基準法、消防法などの確認が必要か

  7. 変更届や更新手続きがあるか

  8. 無許可・無届の場合のリスクは何か

特に、店舗、宿泊施設、建設業、運送業、古物商、風俗営業、飲食店などは、事前確認が重要です。

物件を借りた後、工事を始めた後、営業開始日が決まった後に「実は許可が取れない」と判明すると、大きな損失につながることがあります。

まとめ

許可、認可、届出は、どれも行政手続きで使われる言葉ですが、意味は同じではありません。

許可は、原則禁止されている行為について、要件を満たす場合に認めてもらう手続きです。

認可は、当事者の行為について、行政庁が認めることで効力を完成させる手続きです。

届出は、行政庁に一定の事項を知らせる手続きです。

事業を始める際には、「役所に書類を出せばよい」という漠然とした理解では足りません。

許可なのか、認可なのか、届出なのかによって、営業開始のタイミング、必要書類、審査の有無、違反した場合のリスクが変わります。

特に許可が必要な事業では、許可が下りる前に営業を開始することはできません。

届出であっても、法令上の要件を満たしていなければ、適法に営業できないことがあります。

新しい事業を始めるときは、早い段階で必要な行政手続きを確認し、スケジュールに余裕を持って準備することが大切です。


この記事を書いた人

篠原 博之

行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表

個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第2408248号|東京都行政書士会 新宿支部所属

今すぐ問い合わせる

お電話はこちら

コラム一覧

お問合せ

ご相談は無料です。まずはお気軽にご連絡ください。

記事を探す

関連コラム

2026/4/14

育成就労の監理支援機関の許可申請はいつから?必要書類と注意点を解説

育成就労制度の開始に向けて、監理支援機関の許可申請の準備を進めたいと考えている団体・事業者の方も多いのではないでしょうか。育成就労制度では、技能実習制度の「監理団体」に相当する役割を担うのが監理支援機関です。育成就労外国人と受入れ機関との間の雇用関係の成立のあっせんや、適正な育成就労が実施されている...

2026/3/7

育成就労の監理支援機関とは?許可要件・技能実習との違いをわかりやすく解説

「育成就労の登録支援機関」という言葉で検索されることがありますが、制度上、育成就労で中心となるのは登録支援機関ではなく監理支援機関です。登録支援機関は特定技能制度の仕組みであり、育成就労制度では、受入れ機関を監理し、外国人本人の保護や相談対応にも関与する監理支援機関が重要な役割を担います。2024年...

2025/11/29

日本のウイスキーを海外へ輸出したい!転売と事業の境界線と「輸出酒類卸売業免許」の取得方法

ウイスキーを「ちょっと転売」のつもりが、酒税法違反に?世界的なジャパニーズウイスキーブームで、中古市場やオークションの価格は高騰しています。「手に入りにくい日本のウイスキーを仕入れて、海外に転売したら儲かるのでは?」「ECサイトで日本酒を海外ファンに届けたい」そう考える方は少なくありません。ただし、...

2025/11/29

「韓国コスメを仕入れて売る」は、実は“リスク”あり

Qoo10で安く韓国コスメをまとめ買いしてメルカリやラクマ、BASE、自社ECでちょっと上乗せして売る──こんな副業を考えていませんか?「個人輸入だし、少し転売するくらいなら大丈夫でしょ?」「みんなやってるし、バレないでしょ?」実はここに大きな落とし穴があります。海外から個人輸入した化粧品は、「自分...

行政書士しのはら事務所コラム

許可・認可・届出は何が違う?事業を始める前に知っておきたい行政手続きの基本 

今すぐ問い合わせる