新宿区高田馬場の行政書士事務所

マンションの一室で民泊はできるのか?──「管理規約」と「用途地域」の壁を行政書士が解説 

旅館業・住宅宿泊事業

公開日:2026/6/9

更新日:2026/6/9

「使っていないマンションの一室を、民泊で活用できないだろうか」
そんなご相談を、当事務所でも数多くいただきます。

結論から申し上げると、マンションの一室で民泊を行うことは「可能」ですが、誰でも・どこでも始められるわけではありません。民泊を始めるには、大きく分けて二つの壁を越える必要があります。ひとつは行政上のルールである「用途地域」、もうひとつはそのマンション固有のルールである「管理規約」です。

この記事では、マンション民泊を検討している方が最初につまずきやすいこの二つの壁について、行政書士の視点からわかりやすく整理します。



その前に──「民泊」には3つの種類がある

「民泊」とひとくちに言っても、実は法律上は3つの制度に分かれています。どの制度で運営するかによって、できること・守るべきルールが大きく変わります。

① 住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)

都道府県等への届出制で、比較的始めやすいのが特徴です。ただし、人を宿泊させられる日数は年間180日までという上限があります。マンションの一室での民泊は、多くの場合この制度を利用することになります。

② 旅館業法(簡易宿所営業)

保健所の許可制で、年間の日数制限はありません。安定した通年営業ができる一方、施設基準や立地の要件が厳しく、後述する住居専用地域では原則として営業できません。

③ 特区民泊(国家戦略特別区域法)

特区に指定された区域でのみ利用できる認定制の制度です。年間を通じた営業が可能ですが、最低宿泊日数(2泊3日以上など)の要件があります。

マンションの一室で「気軽に始めたい」という場合、現実的な選択肢は①の民泊新法であることが多いため、以下は主に民泊新法を前提に解説します。


壁その1:用途地域(都市計画法)

土地には「この地域では、どんな建物を建ててよいか」を定める用途地域というルールがあります。これが一つ目の壁です。

ポイントは、制度によって営業できる用途地域の範囲が違うことです。

  • 旅館業法の民泊は、閑静な住宅街である「住居専用地域」では原則として営業できません。

  • 民泊新法は住宅を活用する制度であるため、住宅が建てられる用途地域であれば幅広く営業が可能です。旅館業法では認められない住居専用地域でも、原則として運営できる点が大きな特徴です。

ただし、ここに重要な注意点があります。民泊新法では、各自治体が条例によって「営業できる区域」や「営業できる期間」を独自に制限できるのです。

たとえば東京都中野区では、低層・中高層の住居専用地域について家主不在型の民泊が制限されており、家主同居型でも区長の許可や一定の条件が求められます。お住まいの自治体によってルールが大きく異なるため、「物件のある区・市の条例」を必ず確認することが、計画の第一歩になります。


壁その2:マンション管理規約──ここが最大の関門

用途地域の壁をクリアできても、マンションの場合はもう一つ、最大の壁が待っています。それが管理規約です。

「専ら住宅として使用」という大原則

国土交通省が示すマンション標準管理規約では、専有部分の用途について「専ら住宅として使用する」ことが定められているのが一般的です。これは、購入した部屋は区分所有者やその家族が住むために使うもの、という考え方に基づいています。

不特定多数の人を有償で繰り返し宿泊させる民泊は、この「住宅としての使用」から外れると解釈されるのが通常です。つまり、規約で民泊が明確に許可されていない限り、民泊は難しいというのが出発点になります。

規約に「民泊禁止」と書かれている場合

ここが最も重要なポイントです。

管理規約に「民泊禁止」「住宅宿泊事業としての使用を禁止する」と明記されている場合、たとえ行政への届出が法律上は可能な物件であっても、民泊を行うことはできません。行政のルールよりも、そのマンションの管理規約が優先されるためです。

「届出が受理されたから大丈夫」と考えてしまう方がいますが、それは誤解です。届出はあくまで行政手続きの話であり、マンション内部のルールとは別問題なのです。

規約に何も書かれていない場合も油断は禁物

「うちの規約には民泊のことが何も書いていないから、やってもいいのでは?」というご相談もよくあります。しかし、これも安全とは言い切れません。

過去の裁判例では、頻繁に宿泊者が入れ替わる利用は「住居としての使用」に当たらないとする見解が多く示されています。また、民泊が他の住民の迷惑となり「区分所有者の共同の利益」に反すると判断されれば、管理組合から営業の差止めを求められる可能性もあります。規約に明文がなくても、トラブルに発展するリスクは残るのです。

標準管理規約は改正されている

なお、マンション標準管理規約は、平成29年に民泊の可否を定める規定例(許可する場合・禁止する場合の双方)が追加され、その後令和7年にも改正が行われています。古いひな型のままになっている管理組合も少なくありません。これから民泊を検討する方も、規約の見直しを考える管理組合の方も、最新の内容を踏まえて確認することが大切です。


民泊を始める前のチェックリスト

マンションの一室で民泊を検討する際は、最低でも次の点を順に確認してください。

  1. 物件の用途地域を調べ、民泊が可能な地域かを確認する

  2. 自治体の条例で、営業できる区域・期間に制限がないかを確認する

  3. 管理規約・使用細則に、民泊を禁止する条項がないかを確認する

  4. (賃貸物件の場合)貸主(オーナー)の承諾を得る

  5. 消防法令への適合や、家主不在型の場合の住宅宿泊管理業者への委託を確認する

特に③の管理規約は見落とされがちですが、これを確認せずに進めてしまうと、設備投資をした後に営業できないという最悪の事態にもなりかねません。


まとめ

マンションの一室での民泊は、決して不可能ではありません。しかし、

  • 用途地域と自治体条例という行政上の壁

  • 管理規約というマンション固有の壁

この二つを両方クリアして、はじめてスタートラインに立てます。とりわけ管理規約は、行政の届出が通っても覆らない強力なルールであり、最初に確認すべき最重要ポイントです。

「自分の物件で民泊ができるか調べてほしい」「管理規約の解釈に不安がある」といった場合は、お早めに専門家へご相談ください。当事務所では、物件ごとの可否判断から届出・許可申請まで、一貫してサポートいたします。

コラムを書いた人

篠原 博之

行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表

個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第2408248号|東京都行政書士会 新宿支部所属

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