合同会社の電子定款は自分で作れる?必要なもの・手順・費用を行政書士が解説
会社設立
公開日:2026/6/22
更新日:2026/6/22
「合同会社を設立したい。せっかくなら電子定款で印紙代4万円を浮かせたいけれど、自分で作れるものなの?」
会社設立を控えた方から、こうしたご相談を本当に多くいただきます。結論から申し上げると、合同会社の電子定款は、ご自身で作成することが可能です。 しかも合同会社は株式会社と違って公証役場での認証が不要なため、自分で完結できる余地が大きい会社形態です。
ただし、「作れる」と「スムーズに作れる」は別の話。実際には専用の機器やソフト、そして相応のITスキルが求められ、ここでつまずく方が後を絶ちません。
本記事では、合同会社の電子定款をご自身で作る場合に「必要なもの」「具体的な手順」「リアルな費用」を整理したうえで、結局のところ自分でやるべきか、専門家に任せるべきかを判断できるよう、行政書士の視点から正直に解説します。
そもそも電子定款とは?合同会社ならではのメリット
定款とは、会社の事業目的・商号・所在地・資本金といった基本ルールを定めた、いわば「会社の憲法」にあたる書類です。この定款には、紙で作る「紙定款」と、PDF形式で作成して電子署名を付与する「電子定款」の2種類があります。
電子定款が選ばれる最大の理由は、コストです。
紙の定款は印紙税法上の課税文書にあたるため、収入印紙4万円を貼付する必要があります。 一方、電子定款はそもそも「紙の文書」ではないため印紙税の対象外。つまり、電子定款を選ぶだけで4万円のコストカットになります。
そして合同会社の場合、もう一つ大きな利点があります。
株式会社 … 定款作成後、公証役場での「認証」が必須(手数料がかかる)
合同会社 … 定款の認証が不要
合同会社は、適切に電子署名を付与した時点で定款として有効になります。公証役場とのやり取りが発生しない分、株式会社よりも手続きがシンプルで、ご自身で進めやすい会社形態だといえます。
⚠️ ここが落とし穴:認証が不要だからといって、WordをPDFに変換しただけのファイルは電子定款として認められません。 必ずマイナンバーカードを使った正しい電子署名が必要です。この一手間が、後述する「つまずきポイント」の本体です。
合同会社の電子定款を自分で作るために必要なもの
ご自身で電子定款を作成するには、次の準備が必要です。
必要なもの | 役割 | 費用の目安 |
|---|---|---|
① マイナンバーカード(署名用電子証明書付き) | 電子署名の「本人証明」 | 発行無料(※未取得なら発行に数週間) |
② ICカードリーダライタ | マイナンバーカードを読み取る機器 | 2,000〜3,000円程度 |
③ Word・一太郎などのワープロソフト | 定款の原稿作成 | 既にお持ちの場合が多い |
④ PDF変換・署名ソフト(Adobe Acrobat または SkyPDF) | PDF化と電子署名 | Acrobatは月額サブスク/SkyPDFは買い切り |
⑤ PDF署名プラグイン(法務省提供) | PDFに電子署名を付与する補助ソフト | 無料 |
⑥ 申請用総合ソフト(法務省提供) | オンライン申請の土台 | 無料 |
ポイントは ④のPDFソフト です。法務省が無料配布している「PDF署名プラグイン」を使う場合、これに対応するのは有償版のAdobe Acrobat(StandardまたはPro)であり、無料のAcrobat Readerでは利用できません。Adobeは現在サブスクリプション課金が中心のため、電子署名のためだけに契約すると毎月の費用が発生します。
※ なお、署名方式によってはAcrobat Reader自体の電子署名機能やSkyPDFでも対応可能なケースがありますが、設定の難易度が上がるため、初めての方にはおすすめしにくいのが実情です。
自分で作る手順(合同会社の場合)
おおまかな流れは次のとおりです。
定款の原案を作成(Word・一太郎など) 日本公証人連合会のひな形や法務局の記載例を参考に、商号・本店所在地・事業目的・資本金などを記載します。
PDFに変換 作成した原稿をPDF形式に変換します。ファイル名に使えない文字があるため注意が必要です。
マイナンバーカードで電子署名を付与 ICカードリーダでマイナンバーカードを読み取り、PDF署名プラグイン等を使って電子署名を行います。
登記申請の添付書類として使用 合同会社は認証不要のため、署名済みPDFがそのまま有効な定款となります。これを設立登記申請に添付します。
株式会社であれば、ここからさらに公証役場でのオンライン認証手続きが入りますが、合同会社はこの工程が丸ごと不要。この差は大きく、合同会社が「自分でやりやすい」と言われるゆえんです。
正直なところ、いくら得するのか?コストを計算してみる
「印紙代4万円が浮く」と聞くと魅力的ですが、自分で作る場合は準備コストを差し引いて考える必要があります。
ICカードリーダ:約2,000〜3,000円
Adobe Acrobat:月額およそ2,000円前後〜(または SkyPDF の買い切り 1万円超)
マイナンバーカード未取得なら、発行までの待ち時間
これらに加えて、慣れない作業に費やす時間と設定トラブルのリスクが乗ってきます。会社設立は人生で何度もあるものではありません。一度きりの設立のために機器とソフトを一式揃え、見慣れない画面と格闘することになると、4万円の節約効果が実質的にかなり目減りしてしまうケースもあります。
多くの人がここで止まる「つまずきポイント」
電子定款づくりで実際に挫折が集中するのが、電子署名の環境構築です。よくあるトラブルには次のようなものがあります。
PDF署名プラグインがうまくインストールできない(32bit版/64bit版の問題など)
Acrobatの設定で「SignedPDF」が選択肢に出てこない
マイナンバーカードの電子証明書が読み込めない、エラーが出て署名まで進めない
電子証明書の有効期限切れ(署名用は発行から5年)
これらは「ITに不慣れだから起きる」というより、システム側の仕様が古く・複雑なために、PCに慣れている人でも普通にハマる類のものです。ネット上には、行政書士や経験者ですら設定に半日〜数日を要したという報告が数多くあります。
「自分でやる」が向いている人・向いていない人
ここまでを踏まえて、判断の目安を整理します。
自分で作るのが向いている人
PC操作やソフトの設定が得意
すでにICカードリーダやAcrobatを持っている
今後も電子契約・e-Taxなどで電子署名環境を使う予定がある
専門家に任せた方がよい人
PCの設定やトラブル対応が苦手
今回限りの利用で、機材を買い揃えたくない
確実に・早く設立を済ませたい
事業目的に許認可(建設業・宅建業・古物商・在留資格関連など)がからむ可能性がある
最後の項目は特に重要です。事業目的の書き方ひとつで、後の許認可取得がスムーズになることも、逆に定款変更(時間と費用がかかります)が必要になることもあります。ここは法務的な視点が効くポイントです。
行政書士に依頼すると、何が変わるか
電子定款の作成を行政書士に依頼すると、
印紙代4万円はそのまま不要(電子定款のため)
機器・ソフトを自分で揃える必要がない
定款内容の法的チェックを受けられる
事業目的を、将来の許認可まで見据えて設計できる
署名トラブルや申請ミスのリスクを負わずに済む
といったメリットがあります。手数料はかかりますが、「浮いた印紙代の範囲内で、手間とリスクをまるごと外注できる」と考えると、一度きりの設立では合理的な選択になることが少なくありません。
当事務所が選ばれる理由:ITに強い行政書士
電子定款の本当の難所は、定款の中身そのものよりも 「電子署名まわりのIT工程」 にあります。
行政書士しのはら事務所では、代表がIT支援事業(合同会社kurasuke)も手がけており、法務とITの両面から会社設立をサポートできるのが強みです。「定款の内容は分かるがPCの設定は苦手」「電子署名でエラーが出て進めない」——そうした、士業とITの“あいだ”でこぼれ落ちがちなお悩みにこそ、お応えできます。
建設業許可や外国人雇用(在留資格)、旅館業・民泊といった許認可を見据えた事業目的の設計も含め、設立の入口から伴走いたします。
この記事を書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第2408248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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