民泊・旅館業の規制強化が加速|京都「0日規制」、大阪特区民泊終了、東京宿泊税まで2026年最新動向
旅館業・住宅宿泊事業
公開日:2026/9/4
更新日:2026/9/4
2026年、民泊・旅館業を取り巻くルールが大きく動いています。
特に注目されるのが、自治体による民泊規制の強化です。
2026年7月には、観光庁が自治体に対して、一定の場合には住宅宿泊事業の営業日数を「0日」とする、いわゆるゼロ日規制について技術的助言を発出しました。
その後、京都市が実際にゼロ日規制を盛り込んだ規制強化策の素案を提示しています。
一方、大阪市では特区民泊の新規受付が終了したことで、旅館業許可を取得して宿泊事業を行おうとする動きが急増しています。しかし大阪市は、こうした「民泊から旅館業への移行」を見据えて、旅館業側の条例改正も進めています。
東京でも、豊島区や渋谷区などで民泊・旅館業に対する独自ルールが強化されています。
つまり今後は、
「民泊が難しければ旅館業にすればよい」
と単純に考えることが難しくなってきています。
この記事では、2026年9月4日時点で公表されている情報をもとに、民泊・旅館業をめぐる最近の制度改正や規制強化の動きを整理します。
2026年の民泊・旅館業をめぐる主な動き
まず、最近の主な動きを整理してみましょう。
地域・制度 | 主な動き |
|---|---|
国(観光庁) | 自治体による民泊の「ゼロ日規制」等について技術的助言 |
京都市 | 住居専用地域などで新規民泊を0日とする規制強化策を検討 |
大阪市 | 特区民泊の新規受付終了、旅館業への移行が増加 |
豊島区 | 民泊を年間120日に制限、新規開設可能エリアも縮小 |
渋谷区 | 民泊・旅館業の条例等を改正 |
東京都 | 2027年4月から簡易宿所・民泊にも宿泊税を拡大 |
個別の制度変更だけを見るよりも、これらを一つの流れとして見ることが重要です。
観光庁が「民泊0日規制」について技術的助言
大きな転換点となったのが、2026年7月15日に観光庁等から地方公共団体へ発出された「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について」の技術的助言です。
今回の通知では、
届出住宅に係るゼロ日規制
ICTを用いた管理の義務付け
などについて、地方公共団体に対する考え方が示されました。
住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業の年間営業日数は180日以内とされています。
一方、自治体は条例によって一定の区域・期間について営業を制限することができます。
今回特に注目されたのが、地域の実情によっては営業可能日数を事実上「0日」とする規制についても検討可能となった点です。
これにより、今後は自治体ごとのローカルルールによる民泊規制が、さらに大きく異なっていく可能性があります。
京都市では新規民泊の「0日規制」を検討
観光庁の通知後、早速大きな動きを見せたのが京都市です。
京都市は2026年8月31日に「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」を開催し、「地域の実情を踏まえた民泊規制強化策」の素案を示しました。
報道によると、素案では住居専用地域などにおける新規民泊の営業可能日数を「0日」とすることなどが盛り込まれています。
既に営業している民泊については適用対象外とし、京都市は2027年2月の市議会への条例改正案提出を目指しているとされています。citeturn410612search4
重要なのは、2026年9月4日時点では、これはまだ「素案」であるということです。
すでに条例として施行されたわけではありません。
ただし、京都市自身も、騒音やごみ出しなどに起因する近隣トラブルが多発しているとして、2026年度中の条例改正提案を目指して規制見直しを進めています。
今後、同様の規制を検討する自治体が出てくるかどうかも注目されます。
大阪市では「特区民泊終了→旅館業」の動きが急増
大阪市では、別の形で大きな変化が起きています。
大阪市は、近隣住民とのトラブルや苦情の増加などを背景として、2026年5月29日をもって特区民泊の新規受付を終了しました。
なお、5月29日以前に認定を受けている既存の特区民泊については、引き続き営業可能です。
そこで起こっているのが、
特区民泊から旅館業へのシフト
です。
2026年9月3日の関西テレビの報道によると、大阪市で2026年7月に行われた旅館業に必要な「建築計画」の届出件数は、前年同月の7.7倍に増加したとされています。
つまり、
特区民泊の新規受付終了
↓
それでも宿泊事業を行いたい
↓
旅館業許可を取得する
という動きが発生していると考えられます。
しかし大阪市は「旅館業側」も規制強化へ
ここが非常に重要です。
大阪市は特区民泊の新規受付を終了するだけではなく、その後、事業者が旅館業許可を取得して同様の宿泊事業を行うことまで想定しています。
大阪市は旅館業条例の改正理由について、
特区民泊の受付終了後、民泊を検討している事業者が旅館業法に基づく許可を取得し、特区民泊と同様の事業を行うことが想定される
と明確に説明しています。
そこで、騒音やごみなどによる近隣トラブルを防止するため、旅館業に関する条例改正が進められています。
パブリックコメントは2026年6月18日に終了しており、大阪市は内容を修正せず条例案を市会へ上程し、2026年10月中の施行を目指すとしています。
これは今後の民泊政策を考えるうえで非常に象徴的な動きです。
「民泊を規制すると旅館業へ移るため、旅館業側のルールも見直す」
という流れが現実に起こり始めています。
豊島区では民泊を年間120日に制限
東京都内でも規制強化が進んでいます。
豊島区では、2026年12月16日から住宅宿泊事業について区域・期間の制限が適用されます。
区内全域について営業可能期間を、
春休み
夏休み
冬休み
の合計年間120日に限定します。
さらに新設施設については、住居専用地域、住居地域、準工業地域、文教地区など、区内約70%のエリアで新規設置が制限されます。
つまり豊島区では、住宅宿泊事業法上の全国共通上限である180日よりも、さらに営業可能日数が短くなることになります。
豊島区では「一部屋旅館」への規制も検討
豊島区で特に注目したいのが、民泊だけではありません。
旅館業についても規制強化が検討されています。
豊島区によると、フロントに従業員が常駐していない、いわゆる「一部屋旅館」が増加しており、施設数は510施設に達しています。
令和7年度に寄せられた苦情も、前年度の約4倍となる80件まで増加したとしています。
こうした状況を受け、豊島区は従業員の常駐義務などを盛り込んだ旅館業法施行条例の改正を検討しています。
区長も、住宅宿泊事業に規制をかけた結果、
「旅館業が住宅宿泊事業の抜け道や不正の受け皿とならないようにする」
という趣旨で条例改正を進める考えを示しています。
大阪市と非常によく似た構図です。
渋谷区でも2026年7月から旅館業ルールを改正
渋谷区でも2026年に民泊・旅館業の条例等が改正されています。
旅館業については、2026年7月1日から、玄関帳場(フロント)を設けていない施設について、公衆の見やすい位置への緊急連絡先等の表示が義務化されました。
渋谷区では、旅館業だけでなく住宅宿泊事業についても条例等を改正し、2026年7月1日以降の届出住宅向けに新しい「民泊のてびき」を公開しています。
こうした改正を見ると、単に「許可・届出ができるか」だけではなく、
開業後にどのような管理体制が必要になるか
まで確認する重要性が高くなっています。
東京都では2027年4月から民泊にも宿泊税
規制とは少し性質が異なりますが、東京都の宿泊税についても大きな変更があります。
東京都では2027年4月1日から、宿泊税の課税対象が拡大されます。
現在の旅館・ホテルに加えて、
簡易宿所
新法民泊
特区民泊
の宿泊者も対象になります。
また、課税方式も変更され、1人1泊13,000円未満を非課税とし、13,000円以上の場合には宿泊料金の3%が宿泊税となります。
したがって東京都内で民泊や簡易宿所を運営する事業者は、許認可や届出だけでなく、宿泊税の徴収・申告といった実務についても準備が必要になります。
民泊規制の強化で「旅館業にすれば大丈夫」とは限らない
ここまでの動きを整理すると、非常に興味深い共通点があります。
例えば、
民泊を規制する
↓
旅館業へ移行する事業者が増える
↓
旅館業側にも規制を設ける
という流れです。
大阪市では特区民泊の受付終了後に旅館業関連の届出が急増し、市はその動きを想定して旅館業条例を改正しようとしています。
豊島区でも、民泊規制の強化と並行して、「一部屋旅館」が民泊規制の抜け道とならないよう旅館業条例の改正を検討しています。
つまり、
「民泊ができない物件だから旅館業で申請しよう」
という判断をする場合でも、単純に旅館業法だけを確認すればよいわけではありません。
各自治体の条例や指導基準まで確認する必要があります。
これから民泊・旅館業を始める場合に重要な4つのポイント
2026年以降に宿泊事業を始める場合は、特に次の点に注意した方がよいでしょう。
1.物件契約前に自治体のローカルルールを確認する
民泊・旅館業では、物件を借りたり購入した後に、
「この地域では営業できなかった」
と判明することが最も避けたいリスクの一つです。
特に住宅宿泊事業では自治体による区域・期間制限があるため、
用途地域だけを確認して契約するのは危険です。
旅館業についても、
用途地域
自治体条例
建築基準法
消防法
接道
フロント・管理体制
近隣周知
など、複数の要件を確認する必要があります。
2.「民泊と旅館業のどちらが有利か」を最初に検討する
住宅宿泊事業は旅館業より始めやすい場合がありますが、年間営業日数は180日以内であり、さらに自治体条例によって営業可能日数や区域が制限されることがあります。
一方、旅館業は年間営業日数の上限がありませんが、建築・消防・設備・自治体条例等のハードルが高くなることがあります。
したがって物件を検討する段階で、
民泊
旅館業
特区民泊(対象地域の場合)
のどの制度を利用するのかを比較しておくことが重要です。
3.「無人運営できるか」は自治体ごとに確認する
近年の改正で特に注意したいのが、管理体制です。
全国的な法令上は一定の条件のもとでフロントを設けない旅館業も可能ですが、自治体が独自の条例や運用基準を設けている場合があります。
豊島区では従業員常駐義務の導入が検討され、渋谷区ではフロントを設置しない施設に緊急連絡先等の掲示が義務付けられました。
そのため、
「無人運営できる物件か」
についても、許可申請前に確認した方がよいでしょう。
4.既に営業している施設も改正情報を確認する
条例改正は、新規開業者だけに関係するとは限りません。
例えば豊島区の年間120日の期間制限は、既存の住宅宿泊事業者にも適用されます。
また、渋谷区の緊急連絡先等の表示義務についても、既に旅館業を営んでいる事業者に対応が求められています。
一度許可・届出を行ったからといって、その後ずっと同じルールで営業できるとは限りません。
今後は自治体ごとの「ローカルルール」がさらに重要になる
2026年の一連の動きから見えてくるのは、民泊・旅館業について自治体ごとの差がさらに大きくなっているということです。
住宅宿泊事業法や旅館業法そのものが同じでも、
東京都豊島区
東京都渋谷区
大阪市
京都市
では、実際に宿泊事業を行うための条件が異なります。
さらに今後、観光庁のゼロ日規制に関する技術的助言を受けて、新たな条例改正を検討する自治体が出てくる可能性もあります。
そのため物件選びでは、
「現在のルールで営業できるか」
だけでなく、
「条例改正の動きがないか」
まで確認することが重要になってきます。
よくある質問
Q. 民泊は今後できなくなるのでしょうか?
全国一律で民泊が禁止されるということではありません。
ただし住宅宿泊事業法では自治体条例による区域・期間の制限が認められており、2026年7月には観光庁がゼロ日規制についても技術的助言を発出しています。
今後は自治体によって民泊の営業可能エリアや日数の差がさらに大きくなる可能性があります。
Q. 民泊が禁止されている地域でも旅館業なら営業できますか?
可能なケースはありますが、必ずできるわけではありません。
旅館業では用途地域、建築基準法、消防法、自治体条例など別の要件を満たす必要があります。
自治体によっては旅館業についても独自の規制を設けています。
Q. 京都市ではもう新規民泊が禁止されたのですか?
2026年9月4日時点では、まだ禁止が確定したわけではありません。
京都市が2026年8月31日に示したものは規制強化策の「素案」であり、今後の検討を経て条例改正案の提出を目指しています。
Q. 東京都の民泊にも宿泊税がかかりますか?
2027年4月1日から、新法民泊・特区民泊・簡易宿所の宿泊者も東京都宿泊税の対象になります。
1人1泊の宿泊料金が13,000円未満の場合は課税されず、13,000円以上の場合には宿泊料金の3%が課税されます。
まとめ|民泊・旅館業は「物件を借りる前」の確認がますます重要に
2026年は、民泊・旅館業を取り巻く制度が大きく動いています。
特に、
観光庁によるゼロ日規制等への技術的助言
↓
京都市によるゼロ日規制の検討
↓
大阪市の特区民泊新規受付終了
↓
旅館業への移行増加
↓
大阪市・豊島区などで旅館業側の規制も強化
という流れは、今後の宿泊事業を考えるうえで重要です。
今後は「民泊か旅館業か」という制度だけを見るのではなく、
物件所在地の自治体ルールまで含めて事業可能性を判断する
ことが、これまで以上に重要になるでしょう。
行政書士しのはら事務所では、東京都を中心に、民泊届出・旅館業許可申請のサポートを行っています。
物件を契約する前の段階で、
「この物件で旅館業ができそうか確認したい」
「民泊と旅館業のどちらが適しているか相談したい」
「用途地域や自治体条例を確認してから物件を契約したい」
といったご相談にも対応しています。
宿泊事業を検討されている場合は、物件の賃貸借契約や購入契約を締結する前に、許認可の可能性を確認することをおすすめします。
この記事を書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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