新宿区高田馬場の行政書士事務所

民泊はこれからどうなるのか ― 2026年の規制強化と、これから始める人の選択肢

旅館業・住宅宿泊事業

公開日:2026/10/5

更新日:2026/10/5

「とりあえず民泊」の時代は終わりつつある

結論から申し上げると、民泊は「なくなる」のではなく、「きちんと運営できる人だけが続けられる事業」へと変わりつつあります。

インバウンド需要は引き続き旺盛です。一方で2025年末から2026年にかけて、大阪市の特区民泊の新規受付終了、東京23区での条例改正の相次ぐ施行など、規制の流れははっきりと「強化」の方向に振れました。

このコラムでは、旅館業許可・民泊の手続を日々お手伝いしている行政書士の立場から、いま何が起きているのか、そしてこれから民泊を始める方・続ける方がどう考えればよいのかを整理します。

いま何が起きているか ― この1年の主な動き

最大の転換点は、2026年7月に国が「自治体は条例で民泊の営業日数を0日にできる」と明確にしたことです。これにより、地域によっては民泊の営業を実質的に禁止することが可能になりました。

時期

地域

主な内容

2026年9月

新宿区

住居専用地域・文教地区で民泊営業を原則禁止とする方針が報じられる。既存施設も猶予期間のうえ対象となる見込み(条例改正はこれから)(日本経済新聞報道の整理)

2026年7月

国(観光庁)

自治体が条例で年間営業日数を0日に設定できることを通知で明確化(参考)

2026年7月1日

渋谷区

制限区域を住居地域等にも拡大。家主不在型の180日特例を廃止し、制限区域内の実質営業日数は年約63日に(参考)

2026年5月29日

大阪市

特区民泊の新規受付を終了。認定済み施設は営業継続可(トラベルボイス)

2026年4月

墨田区・葛飾区

上乗せ条例を新たに施行。管理者が常駐しない施設は週末中心の営業に(参考)

2025年12月

豊島区

改正条例が成立。2026年12月16日から既存施設も含め年120日に制限、区内約7割の地域で新設禁止(日本経済新聞)

2025年11月

新宿区

16施設・9事業者に業務停止命令、4事業者に廃止命令(参考)

東京23区では、上乗せ条例のない区は北区・江戸川区のみとなり、ほぼすべての区で何らかの制限がかかる状況です。「ルールの新設」に加えて、「違反への処分」も確実に厳しくなっています。

なぜここまで規制が強まるのか

一言でいえば、「住宅地で、管理の目が届かない宿泊施設が増えすぎた」ためです。

  • 近隣トラブルの増加:騒音、ごみ出し、深夜の出入り、路上での滞留などの苦情が各地で急増しました。大阪市が特区民泊の新規受付を止めた理由も、まさにこの点です。

  • 制度違反・管理不全:営業日数の超過、定期報告の未提出、標識の未掲示といった基本的なルール違反が、新宿区などの処分理由の多くを占めています。

  • 集中しすぎた供給:新宿区内の届出住宅は2026年7月時点で3,775件と全国最多です(参考)。住宅地の生活環境と、宿泊需要とのバランスが崩れたといえます。

つまり規制の矛先は「民泊そのもの」というより、「届出だけして運営を丸投げし、地域と向き合わない運営」に向いています。この点を押さえておくと、今後の選択肢が見えやすくなります。

3つの制度の違い ― これからの「本命」は旅館業許可

いわゆる「民泊」には3つの制度があります。規制強化の影響を最も受けにくく、通年で営業できるのは旅館業法の許可(簡易宿所など)です。

項目

住宅宿泊事業(民泊新法)

特区民泊

旅館業(簡易宿所など)

根拠

住宅宿泊事業法

国家戦略特区法

旅館業法

手続

届出

認定

許可

年間営業日数

最大180日(条例でさらに短縮・0日も可能に)

制限なし

制限なし

最低宿泊日数

なし

2泊3日以上

なし

主なハードル

区ごとの上乗せ条例

実施区域が限られ、大阪市は新規終了

用途地域、建築基準法、消防法、構造設備の基準

これからの見通し

地域によっては縮小・実質禁止

新規参入はほぼ難しい

要件は厳しいが、制度としては最も安定

民泊新法は「手軽に始められる」ことが最大の魅力でした。しかし条例で日数が削られ続ける今、その手軽さは「いつでも制限されうる不安定さ」の裏返しでもあります。事業として腰を据えるなら、最初から旅館業許可を取れる物件かどうかを基準に考えることをおすすめします。

これから始める方・続ける方へ

いちばん大切なのは、「物件を買う・借りる前に、宿泊施設として使えるかを調べる」ことです。契約した後で「この場所では営業できない」と分かるのが、最も損失の大きいパターンです。

これから始める方

  1. 用途地域と区の条例を確認する:住居専用地域や文教地区は、今後さらに厳しくなる可能性が高いエリアです。

  2. 旅館業許可が取れるかを先に調べる:接道、建物の用途変更の要否、消防設備、玄関帳場(フロント)の扱いなどを、物件取得前に確認します。

  3. マンションの管理規約を確認する:条例をクリアしても、規約で宿泊利用が禁止されているケースは少なくありません。

  4. 近隣説明と管理体制を最初から設計する:渋谷区や墨田区では、旅館業の側でも事前の住民説明や常駐・緊急連絡体制が強化されています。

すでに民泊を運営している方

  • 経過措置の条件を確認する:多くの区で既存施設への猶予がありますが、条件は区ごとに異なります。運営形態を変えた時点で新ルールが適用される場合もあります。

  • 旅館業許可への切り替えを検討する:営業日数の制限から解放される一方、建築・消防の要件を満たす必要があります。早めの調査が有利です。

  • 基本ルールを徹底する:定期報告、標識の掲示、営業日数の管理。処分の多くは、こうした基本の抜け漏れから始まっています。

  • 出口も選択肢に入れる:要件を満たせない物件は、賃貸への転用や売却も含めて判断する時期に来ています。

まとめ ― 民泊は「整理の時代」へ

民泊の需要がなくなるわけではありません。変わるのは、「誰でも気軽に参入できる」時代から、「許可を取り、地域と共存できる事業者が選ばれる」時代へ、というルールの側です。規制強化は厳しい話に聞こえますが、正面から許可を取ってきちんと運営する事業者にとっては、競争環境が整う機会でもあります。

行政書士しのはら事務所(新宿区・高田馬場)では、旅館業許可の申請を中心に、物件取得前の調査、用途地域・接道・消防の確認、近隣説明資料や図面の作成までお手伝いしています。「この物件で宿泊業ができるか知りたい」「民泊から旅館業に切り替えたい」といったご相談も、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

篠原 博之

行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表

個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属

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