建設業許可の「500万円」の要件、どうやって証明する?
建設業許可
公開日:2025/11/14
更新日:2025/12/1
建設業の相談を受けていると、ほぼ必ず出てくるこのフレーズ。
じつは、この「500万円」、2つの意味があります。
工事金額が500万円を超えたら許可が必要というルール
建設業許可を取るために必要な、財産的基礎(自己資本500万円など)のルール
この記事では、特に誤解が多い ②「財産的基礎としての500万円」 を中心に、
「何を」「どの書類で」証明するのかを、実務ベースで整理していきます。
- そもそも「500万円」の正体は?
- 1. 許可が要るかどうかのラインとしての500万円
- 2. 許可を取るための「財産的基礎」としての500万円
- パターン①:自己資本500万円以上で証明する
- 1. 法人の場合(会社)
- 2. 個人事業主の場合
- パターン②:500万円以上の資金調達能力で証明する
- 1. 一般的な証明方法
- 2. 有効期限に要注意!
- 3. 代表者や親族からの借入金で500万円を作るのはOK?
- 4. 残高証明以外のパターン
- パターン③:5年以上の許可営業実績で証明する(更新時)
- よくある勘違い・NGパターン
- 「資本金500万円にすれば終わりでしょ?」
- 「社長の通帳をコピーして出せばいい?」
- 「一瞬だけ借りて500万円にして、残高証明を取ればいい?」
- 実務的な進め方:500万円要件クリアまでのチェックリスト
- STEP1 最新決算書の「純資産」を確認
- STEP2 足りなければ「預貯金+借入」で500万円を作れるか検討
- STEP3 残高証明を発行するタイミングを調整
- STEP4 書類の整合性チェック
- まとめ:「500万円」は“壁”というより“最低限の安全装置”
そもそも「500万円」の正体は?
建設業法では、次の2つの場面に「500万円」が登場します。
1. 許可が要るかどうかのラインとしての500万円
建設工事の請負金額が 税込500万円以上(建築一式以外の場合)の工事を請け負うなら、建設業許可が必要です。
500万円未満だけの「軽微な建設工事」だけをやるなら、許可は不要という扱いです。
ここでいう「請負金額」は、
消費税を含んだ金額
材料費・運搬費も含めた総額
分割契約しても、実質1件なら合算
で判断されます。
2. 許可を取るための「財産的基礎」としての500万円
建設業許可(一般)の要件の1つに、
「請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用」 というものがあります。
実務では、次の いずれか を満たせばOKです。
直前決算で 自己資本額が500万円以上 ある
500万円以上の資金調達能力 がある
(更新時等)直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
新規で許可を取る場面では、基本的に ①か②で証明 することになります。
パターン①:自己資本500万円以上で証明する
いちばん王道なのが、このパターンです。
1. 法人の場合(会社)
法人の「自己資本」は、貸借対照表の「純資産合計」 のことです。
資本金
利益剰余金
その他資本剰余金 など
を合計した金額が 500万円以上 になっていれば、要件クリアです。
必要書類のイメージ
直前事業年度の 決算書(貸借対照表・損益計算書)
法人税申告書の別表一(税務署の受領印またはe-Tax送信結果)
※都道府県によって細かい指定は違いますが、基本は「直前決算での純資産が分かる資料」です。
ありがちな落とし穴
資本金は500万円あるけど、赤字続きで純資産がマイナス(債務超過)
→ この場合、NG。資本金だけ見てもらえるわけではありません。決算書の科目整理がぐちゃぐちゃで、「純資産500万円」をどう計算したのか説明できない
→ 建設業許可の様式に合わせて決算書を整理し直した方が安全です。
2. 個人事業主の場合
個人には「純資産の部」という概念がないので、自己資本は次のように計算します。
自己資本 =
(期首資本金 + 事業主借 + 事業主利益)
- 事業主貸
+ 利益留保性の引当金・準備金
青色申告決算書の貸借対照表がきちんと作られていれば、この式で自己資本を算定できます。
必要書類のイメージ
最新の 所得税確定申告書
青色申告決算書(貸借対照表付き)
※白色申告や、貸借対照表を作っていない場合は、このパターン①は使いにくくなります(その場合は後述の②「預貯金残高証明」のルートに回すことが多いです)。
パターン②:500万円以上の資金調達能力で証明する
「決算書では自己資本500万円に届かない…」
そんなときに使えるのが、このルートです。
1. 一般的な証明方法
いちばん使われるのは、金融機関の預貯金残高証明書 です。
申請者名義(会社または個人)の口座で
残高が 合計500万円以上 あることを
銀行に「残高証明書」として発行してもらう
複数の口座の残高証明書を足して500万円以上にすることも、自治体によっては可能です。
2. 有効期限に要注意!
多くの自治体で、残高証明書には 「残高日から1か月以内」 といった有効期限が決められています。
× 「発行日から1か月」ではない
◎ 「証明している残高日から1か月」
申請の準備が長引くと、証明書を取り直しになることも多いので、
書類がほぼ揃った段階で発行依頼 をするのが安全です。
3. 代表者や親族からの借入金で500万円を作るのはOK?
「会社の口座にはお金がないけど、社長個人の預金ならある」
このパターンはとても多いです。
この場合、次のような形にすれば、要件クリアとなる運用が一般的です(詳細は自治体の手引き要確認)。
社長個人 → 会社へ 金銭消費貸借契約(役員借入金) を結んで資金を入れる
会社名義の残高証明書で500万円以上を証明する
ポイントは、
単なる「見せ金」ではないこと(すぐに全額引き上げる前提の資金移動はNG)
契約書・社内稟議・取締役会議事録など、実体のある借入として整理しておくこと
です。
4. 残高証明以外のパターン
自治体によっては、次のような資料で「資金調達能力」を認める場合もあります。
金融機関の 融資承諾書・極度額契約書(無担保で500万円の枠がある等)
不動産を担保にした、500万円以上の融資が可能であることの証明
ただし、運用は自治体ごとに差が出やすい部分なので、
事前に所轄庁や専門家に確認 してから動く方が安全です。
パターン③:5年以上の許可営業実績で証明する(更新時)
すでに建設業許可を持っていて、直前5年間、途切れずに許可業者として営業していた場合 には、
更新や業種追加の際、改めて「500万円」の証明を求められない扱いになっています。
この場合のポイントは、
毎年の 決算変更届をきちんと出していること
行政処分等を受けていないこと
など、「真面目に5年やってきた実績」 が、そのまま財産的基礎の裏付けと見なされるイメージです。
よくある勘違い・NGパターン
「資本金500万円にすれば終わりでしょ?」
→ 答え:NO。見るのは「純資産」 です。
資本金500万円で設立しても
赤字で繰り返し食いつぶして、純資産が300万円しかない
こうなると「自己資本500万円」とは認められません。
設立時に資本金をいくらにするかだけでなく、その後の利益の積み上げ が重要です。
「社長の通帳をコピーして出せばいい?」
→ 多くの自治体は、通帳コピーだけでは不可。
必ず、金融機関発行の 残高証明書 が必要です。
また、社長名義の預金をそのまま出すのではなく、
会社への貸付金として入金
そのうえで会社名義の残高証明を取る
といった整理を求められるケースが多いです。
「一瞬だけ借りて500万円にして、残高証明を取ればいい?」
いわゆる 見せ金 は、
虚偽申請として 許可取消や罰則の対象 になり得ます。
借入の実体がない
すぐに全額返す前提で、残高証明のためだけに動かしている
こうしたスキームは絶対に避けるべきです。
実務的な進め方:500万円要件クリアまでのチェックリスト
最後に、実際に建設業許可を目指すときの、現実的な手順 をまとめておきます。
STEP1 最新決算書の「純資産」を確認
法人:貸借対照表の「純資産合計」が500万円以上あるか
個人:青色申告決算書の貸借対照表から自己資本を試算
→ 500万円以上あれば、パターン①(自己資本)でGO。
STEP2 足りなければ「預貯金+借入」で500万円を作れるか検討
会社の預金
代表者や親族からの長期貸付
必要なら金融機関からの融資枠
を組み合わせて、申請タイミングで500万円以上の預金残高 を作れるか検討します。
STEP3 残高証明を発行するタイミングを調整
申請書・添付書類がほぼ揃った段階で
銀行に残高証明書を依頼(できれば申請の数日前〜1週間前くらい)
有効期限切れで取り直し…という二度手間を防ぎます。
STEP4 書類の整合性チェック
決算書・申告書
貸借対照表の科目(役員借入金・役員貸付金など)
借入契約書や社内決裁文書
これらがストーリーとして破綻していないかを確認することが大事です。
まとめ:「500万円」は“壁”というより“最低限の安全装置”
建設業許可の「500万円」の要件は、
500万円以上の工事を請け負うために
元請・発注者を不安にさせないだけの
最低限の財産的なクッションを持っているか
をチェックするためのものです。
数字だけを見ると高く感じるかもしれませんが、
きちんと利益を積み上げている会社・事業者であれば、
決して超えられないハードルではありません。
「うちの決算書・通帳の状況だと、どのパターンでいけるのか?」
ここからが、本当の実務です。
顧問の専門家や所轄庁に早めに相談しつつ、
ムリのない形で「500万円要件」をクリアしていきましょう。
コラムを書いた人
篠原 博之
行政書士・AFP
行政書士しのはら事務所 代表
個人税理士事務所・中小企業の総務部長・税理士法人のIT担当の経験を経て独立
バックオフィスのDXに注力している。
登録番号:第24080248号|東京都行政書士会 新宿支部所属
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